さくや(@sakuyakonoha77)です。
DIYをしていると、木材をノコギリできるだけでは十分な精度が出せなくて困ることがあります。小さな誤差も積み重なると大きな狂いになってしまう・・という悩みを解決してくれる道具が、鉋(かんな)です。
鉋と言えば日本の大工道具ですが、『西洋鉋(せいようかんな)』というものもあるのををご存じでしょうか?
日本ではあまり知られていませんが、かんたんに扱うことができて木材を精密に加工することができる道具です。初心者に特におすすめできます。
この記事では私が実際に使っている西洋鉋を紹介しつつ、西洋鉋のメリットとデメリット、使い方、刃の研ぎ方などのメンテナンス方法についてまとめます。
こんな方におすすめ
- 西洋鉋とは何か、日本の鉋との違いについて知りたい方
- 西洋鉋の特徴、メリットとデメリットについて知りたい方
- 西洋鉋の使い方と、刃の研ぎ方などのメンテナンス方法について知りたい方
和鉋(わかんな)と西洋鉋(せいようかんな)
鉋(かんな)といえば大工道具、ということはDIYをされている方なら知っているかと思いますが、和鉋と西洋鉋があることはあまり知られていません。
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和鉋(寸八)

西洋鉋(Block Plane)
実は引いて使うタイプの和鉋は世界的にみれば特殊で、主に日本でしか使われていません。日本で用いられるようになったのも江戸時代以降の話で比較的歴史の浅い道具です。
※それ以前の日本では釿(ちょうな)や槍鉋(やりかんな)などが使われていました。
一方、西洋では主に押して使うタイプの西洋鉋が使われています。古代ローマ時代のころから使われていたもので、2000年以上の歴史がある道具です。もちろん西洋の方々は自分たちの道具を”西洋”鉋とは呼ばず、単に鉋(英語ではplane)と呼んでいます。
和鉋と西洋鉋は押す/引く以外にも様々な特徴の違いがあります。以下では西洋鉋と和鉋の違いに着目しつつ、西洋鉋の特徴とメリットデメリットについてまとめていきます。
西洋鉋の特徴
西洋鉋の特徴は、メンテナンスが容易で初心者でもかんたんに扱えるという点です。
これは実際の話ですが、定年退職してDIYを始めた私の母が、私の真似をして西洋鉋を購入しました。包丁すら研いだことがなかった母なのですが全く問題なく西洋鉋を使いこなしてDIYに活かしています。女性でも、高齢でも、DIYの経験が無くても西洋鉋は使いこなせるという良い実例です。
西洋鉋が簡単に使えるのは①刃研ぎがかんたんであること、②台の調整がほぼ不要であることが大きな理由です。
①西洋鉋は、刃が研ぎやすい
西洋鉋は、適切な道具を使えば初心者でも刃を研ぐことが可能です。初心者が鉋を使う上での最大のハードルは刃研ぎなので、それが解決できるのは非常に大きなメリットです。
その理由は西洋鉋と和鉋の刃の形状の違いにあります。西洋鉋と和鉋の刃を比較した写真を見てみてください。

和鉋の刃(上)と西洋鉋の刃(下)
和鉋の刃は厚みがありテーパー(先細り型)になっている一方で、西洋鉋の刃は厚さも幅も一定です。材質が異なるという点も大きな違いですが、これについては後述します。
刃の厚さと幅が一定だと何が嬉しいのか。それは『ホーニングガイド(研ぎガイド)』が使えることです。むしろ西洋鉋は、ホーニングガイドを使うことを前提に作られていると言っても過言ではないでしょう。
和鉋は、以前の『替え刃式鉋』の記事でも紹介したとおり、刃を研ぐのが非常に難しい道具です。
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一方で西洋鉋は、ホーニングガイドを使えば初めてでも正しく刃を研ぐことが可能です。私が初めて西洋鉋の刃を研いだときですら、下の写真のように透けるほどの薄さで木を削ることができました。

西洋鉋の削りくず(鉋の下に三枚あり、透けているのがわかります)
『ホーニングガイドを使えば和鉋の刃も研げるから、和鉋でいいのでは?』と思う方もいるかもしれません。和鉋の刃をホーニングガイドに固定するのは難しいですが、工夫すればできないことではないでしょう。
しかし残念ながら、和鉋は刃を研げれば使えるというわけではありません。台直し、裏出し、裏押し、裏金の調整など、刃を研ぐ以外の様々な調整作業が必要です。

鉋の刃口埋めはかなり大変な作業
上の写真は和鉋の刃口を埋め直している作業です。中古鉋は刃口が大きく広がってしまっているため、こういった調整も必要になります。(ブロックプレーンなら刃口を自由自在に調整することができます)
こういった調整は自力で行う必要があり、初心者にとって難しい作業であることは間違いありません。和鉋は初心者にはハードルが高いと言えます。
①’【デメリット】西洋鉋は、和鉋と比較すると切れ味が劣り、長切れしない
西洋鉋の刃はホーニングガイドを使えば研ぐことができますが、和鉋と比較すると切れ味が劣り、切れ味が長持ちしないというのがデメリットです。
これは和鉋と西洋鉋の刃の材質と構造の違いが影響しています。
和鉋の刃の特徴
和鉋の刃は『地金(じがね)』と呼ばれるやわらかい鉄と、『鋼(はがね)』と呼ばれる硬い鉄を張り合わせて作られています。
和鉋の鋼(青紙など)は非常に硬いため、これで作られる刃はとても鋭く切れ味が長持ちします。ただしあまりに硬いため、すべてを鋼にすると研ぐことが難しくなります。そこで和鉋の刃では、鋼は薄いものを使用し、やわらかくて研ぎやすい地金で厚みを持たせています。
西洋鉋の刃の特徴
西洋鉋は地金が無く、鋼のみで造られる『全鋼(ぜんこう)』と呼ばれる刃を使っています。和鉋の鋼と比べるとやわらかい鋼(A-2鋼など)を使っているため比較的研ぎやすいものの、切れ味は和鉋ほどではなく長持ちもしません。
こう書くと西洋鉋の性能は大丈夫なのかと不安になるかもしれませんが、DIYレベルであれば全く問題はありません。

なお、西洋鉋用の『日本製の鋼(青紙)の替え刃』というものも存在します。私が知る限りではStanley製の西洋鉋向けに販売されている『カルタブルー』と、大工道具の曼陀羅屋が販売している西洋式鉋刃があります。
西洋の刃で満足できなくなったときは刃を日本製のものに交換して使い続けることもできます。ただし西洋鉋の刃はメーカー互換性がありませんので、替え刃に合わせてメーカーを選ぶ必要がありますので注意してください。
②西洋鉋は、台の調整が不要
西洋鉋は台の調整がほぼ不要です。DIYでSPFや合板を相手に使う程度ならば、狂いが生じることはほとんどないでしょう。

ただしこれはメリットである一方でデメリットでもあり、西洋鉋が高価になってしまう一因でもあります。
詳しい説明をする前に、『台の調整ってなに?』という方のために捕捉します。
鉋台の精度と調整について
鉋は、和鉋も西洋鉋も、木材を平面に削るための治具(ジグ;ガイドのこと)に刃を取り付けたものと考えることができます(※曲面削り用の鉋もありますが、ここでは割愛)。
したがって平面で削る上で最も重要なのは鉋台の平面精度となります。鉋台の下端(したば)面が平面であるからこそ、それに合わせて削った木材が平面になるのです。
しかし和鉋の場合、台も木製であるため使っているうちに凹みや歪みが出てきます。和鉋は木材としては硬い部類の樫材を使っていますが、とは言っても木材なので変形します。そうなると平面で削ることができなくなるため、台を平面に修正するという作業が必要になります。
一方で西洋鉋の台は鋳鉄で作られているため、使っているうちに台が歪むということはまずありません。
しかしそれはそもそも台が狂っていなければの話です。最初から台が歪んでいる場合は修正が必要ですが、鉄を削って調整する作業になりますので、木製の台以上に難しい作業になります。
したがって西洋鉋を使う場合、最初に精度の高い(歪みのない)鉋を手に入れることが重要となります。西洋鉋は様々なメーカーから販売されていて価格も様々ですが、値段の違いは精度の違いと考えて差し支えありません。
おすすめの西洋鉋メーカー
ではどのメーカーの鉋がよいのかと言えば、私も使用しているLie-nielsen(リー・ニールセン)製のものをお勧めします。

Lie-nielsen製の鉋は初期精度が非常に高く、本体の平面精度は±0.0015インチ(0.038mm)以内で加工されています。側面の直角精度も高く、スコヤで確認する程度では歪みを見つけることができません。

直角精度が高く、平面にも歪みが無いことがわかる
本体はダクタイル鋳鉄製で、鋳造時のストレス(癖)も除去してあるため使っていくうちに歪むことがありません。説明書には『生涯使える道具』と記載されています。
私が留め切り加工(45度の加工)で使用しているのもこの鉋で、初期調整無しで十分な精度で加工することができています。西洋鉋のメーカーで迷うのであればLie-nielsen製をお勧めします。
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②’【デメリット】西洋鉋は高価
西洋鉋は最初に良いものを購入する必要があるため、どうしても高価な買い物になってしまいます。これが西洋鉋最大のデメリットです。
参考までに価格を挙げておくと、
Lie-nielsen製と、よく知られているStanley製の鉋では同等機種でもおよそ2倍の価格差があります。価格の違いは精度の違いに直結していますので、精度の低い製品を買うのであればそれを修正できるかどうかが問題になります。西洋鉋の修正を行っている方の記事もありましたので参考にしてみてください。
上の記事のように精度を自分で修正することができるならばOKです。しかしDIY初心者にとっては正しく修正することも難しいはずで、そこで挫折してしまっては元も子もありません。
DIY初心者こそ、まずはキチンと調整された道具で正しい使い方を身に付けるためにも、最初の一台目は良いものを購入することをお勧めします。
西洋鉋の購入方法
日本で西洋鉋を購入する方法は二つあります。店頭、もしくは通信販売での購入です。
店頭で購入
店頭で購入できるといったものの、西洋鉋を販売している店舗は殆どありません。私が知る限りでは東急ハンズ新宿店のみです。
『スムースプレーン』『ショルダープレーン』『ブロックプレーン』『ルータープレーン』『ホーニングガイド』などが販売されていました。
もし関東にお住まいの方であれば、実際に店舗で実物を見てみるといいでしょう。大きさや質感などがわかりますので、購入するかどうかの判断材料になるはずです。店舗に行くのが難しい方は通信販売で購入するしかありません。
なお、東急ハンズで販売されている商品は後述の通販のサイト(Tools Gr.)で販売しているものと同じもののようです。
これは余談ですが、東急ハンズ新宿店では毎週木曜日に『杉田木工実演』が行われています。日本における西洋鉋の第一人者、杉田豊久氏による木工の実演が行われていますので、可能であれば訪れてみるのもおすすめです。もし難しいようであれば杉田氏の書籍でも西洋鉋が紹介されていますので、読んでみると参考になります。
通信販売で購入
Lie-nielsenはアメリカの企業ですが、日本でもLie-nielsen製西洋鉋の輸入と販売を行っているサイトがありますので、こちらで購入可能です。取扱商品の詳しい説明もありますので、ぜひ見てみてください。

もし日本の代理店では手に入らない製品が欲しい場合はLie-nielsen公式サイト(英語)を参照することになります。
西洋鉋の種類
和鉋にも『平台鉋(ひらだいかんな)』『豆鉋(まめかんな)』『作里鉋(さくりかんな)』・・があるように、西洋鉋にも多くの種類があります。
それぞれ用途が異なるのですが、DIY初心者が最初の一台として買うならば『ブロックプレーン』が最適です。私が現在使っているのもこれです。
Lie-nielsenでは『アジャスタブルマウス・ローアングル・ブロック・プレーン [60-1/2]』と呼ばれているものです。
ブロックプレーンは特に木口削りを得意とする鉋で、小型で使いやすいというのが特徴です。実際に私がブロックプレーンを使ってパイン材を削ったときの写真がこちらです。

木口を削るブロックプレーン

木口の削りくず
木口が薄くスライスされていることがわかります。このように、木口面であっても精密な加工が可能なのがブロックプレーンです。
もちろん木口以外の削りも可能で、木端などの目違い(段差)払い、狭い幅の平面削りなど、DIYで必要となる細かい作業で力を発揮します。
なお、ブロックプレーンは切削幅が狭いので大きな面を平らにならすのには不向きで、その場合は他の西洋鉋を使うことになります。大きな西洋鉋は価格も高いので、まずはブロックプレーンで西洋鉋の扱いに慣れてみて順次買い足すのがいいでしょう。
その他の鉋についてはTools Gr.のWebサイトで詳しく紹介されています。興味があればこちらもご覧になってみてください。
西洋鉋の仕組みと使い方
西洋鉋は和鉋と比較すると構造が複雑ですが、使っていると自然と憶えてしまうものです。経験や勘に頼らなくても使えるよう作られているので、初心者でもすぐに使いこなせるようになります。
部品の説明
以下では、西洋鉋のなかのブロックプレーンを例に詳しく説明していきます。
ブロックプレーンは主に以下の部品で構成されています。

西洋鉋のパーツ
- Bronze cap iron(キャップ)・・・持ち手になる部分。掌にフィットする形になっています。cap ironとは裏金のことを意味するようですが、和鉋の裏金のような機能は無い気がします。
- Spinwheel(スピンホイール)・・・キャップと刃の間で『突っ張り棒』のように働き、刃を押し付けて固定します。
- Brass adjustment lever(調節レバー)・・・刃口の広さを調整するレバー。
- Brass lock screw(ロックねじ)・・・刃口調整レバーを固定するネジ。
- Adjustable mouth plate(刃口調整プレート)・・・和鉋の『木っ端返し』に相当。前後に動かし、刃口の広さを調整できるのが特徴。
- Blade adjuster nut(刃調整ナット)・・・刃の出し入れを調整するネジ。
- Body(本体)・・・鉋の台。
- Blade(刃)・・・鉋の刃。
組み立て方
西洋鉋の組み立て手順は、言葉で説明するよりも見た方が早いですね。簡単なGIF動画ですが、次のようになります。

西洋鉋組み立て

刃の調整方法
鉋の刃を出し入れする場合、和鉋ならば鉋頭や台頭を叩いて調整しますが、西洋鉋の場合は⑥刃調整ナットで調整します。

刃の出し入れは後ろのネジで調整
刃調整ナットを時計回りに回せば刃が前進し、反時計回りに回せば後退します。これを利用して刃の出し入れを行います。
和鉋の場合は鉋台を目の高さに上げて‥というように刃の出具合を直接目で確認しますが、西洋鉋の場合は直接確認しなくても調整可能です。
西洋鉋を木材の上に置き、軽く前後に動かして刃が引っかからなければナットを時計回りに回す、引っかかりすぎるようであれば反対に回す・・という調整を行います。最初は戸惑いますが、慣れれば自然と調整できるようになります。
刃を出す量が決まったら②スピンホイールを回して刃を固定します。このとき刃の左右の傾きも調整可能なので、削ってみて左右で偏りがあるようならばここで微調整してください。
なお、このときスピンホイールは回しすぎないように気を付けてください。さきほど紹介した杉田さんから聞いたお話では
『刃を固定した状態でもナットを回せば刃が前後し、少し強く力を入れれば手で刃の左右の傾きも直せる程度にスピンホ
とのことでした。最初はついつい強めに締め付けてしまいますが、その必要は無いということですね。ムキになってスピンホイールを回さないように注意しましょう(笑
刃口の調整方法
ブロックプレーンは刃口の大きさを調整できることが特長です(ほかの西洋鉋は調整不可)。
刃口の大きさは削りくずの厚さと、逆目防止に影響します。刃口を広げれば粗削りに、刃口を狭めれば薄削りになりますので、鉋一台で粗削りから薄削りまで対応できるということです。

刃口が調整可能
刃口の調整は③調整レバーと④ロックネジで行います。
西洋鉋の使い方と、削りやすくするための治具(ジグ)
西洋鉋は手前から奥に押して使います。和鉋は奥から手前に引いて使いますので、西洋鉋とは逆です。
最初は力加減がわかりにくいかもしれませんが、使っていくうちに慣れていきますので心配いりません。
平面を削るときの使い方
私が古い和鉋(立ち鉋)の台を修正したときにもブロックプレーンを使用しましたが、そのときの写真はこんな感じです。

和鉋を西洋鉋で削る!
この鉋は中古だったため、表面の木材がかなり劣化していました。それを削りたかったので比較的厚めに削っていますが、このくらいであればサクサク軽快に削ることができます。
力を入れて押し削りする際、削る対象が動いてしまうとうまく削ることができません。そのため削る対象が動かないようにする治具(ジグ)を使っています。その治具はこちらです。

削る対象を固定するための治具
ラワンベニヤ合板の手前(下面)と奥(上面)にそれぞれ端材を打ち付けただけの簡単治具ですが、西洋鉋を使うときにあるととても便利です。
下の写真のようにジグをテーブル手前ひっかけて置き、削る対象をジグに乗せて奥の木材にひっかけます。西洋鉋で削る対象を押しても、対象が奥に動かないという仕組みです。
ちなみに鉋だけでなく彫刻刀やノミなど、押し削りする道具全般で使うことができます。

治具の使い方
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そのため木材の両端から中央に向けて削るようにするか、木口削り専用のジグを作る必要があります。

木口削り(留め切り)専用ジグ
上の写真は、木材の木口を45度で削るための専用ジグです。こちらの記事で詳しく紹介しています。
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上の写真のように治具に木材を押し当てて、西洋鉋を治具に合わせて滑らせるようにすれば木口をきれいに削ることができます。
西洋鉋の刃の研ぎ方
鉋は刃を研げるかどうかが非常に重要ですが、西洋鉋の場合は『ホーニングガイド』と呼ばれる専用の道具を使うことでとても簡単に研ぐことができます。
西洋鉋の刃研ぎでおすすめのホーニングガイド(研ぎガイド)
ホーニングガイドは、シンプルなものであればホームセンターでも『研ぎガイド』などの名前で販売されています。
しかしこの研ぎガイドは研ぎ角度の設定ができないため、毎回同じ角度で研ぐためには別途調整用の道具を用意する必要があります。
そこで、私が使っている『Veritas マークII ホーニングガイド』を紹介します。

Veritas製のホーニングガイド
このホーニングガイドの特徴は三つあります。
- 刃の角度を正確に設定することができる治具が付属している
- 刃を上下で挟み込む構造のため、薄い西洋鉋の刃でもしっかり固定できる
- ローラーが幅広で、研ぎの際に手ブレせず安定するため正確な刃付けができる
研ぎ角度の設定方法
Veritas マークII ホーニングガイドに付属する治具を使えば、任意の角度で刃物を研ぐことができるようになります。

刃の角度を設定するための治具
見てわかるとおり10度~54度まで様々な目盛りがあり、下についている設定金具をセットすることで任意の角度で刃物を研ぐことができます。対応できるのは鉋の刃だけでなく、挟み込むことで固定できる刃物であれば様々なもので利用可能です。

刃の角度は切れ味だけでなく、刃の耐久性や削る材料との相性に直結します。初心者が刃を研ぐとどうしても刃の角度が変わってしまうものですが、このホーニングガイドがあればその心配もありません。また、既に角度が狂ってしまった刃物を修正する際にもこのホーニングガイドは大活躍します。
ホーニングガイド(研ぎガイド)の使い方
角度設定用の治具で任意の角度を設定したら、ホーニングガイド本体に治具を取り付けます。

角度設定治具を取り付け
組み立てたものを裏返し、ホーニングガイドの挟み口に鉋の刃を差し込み、角度設定治具の右端と角度設定金具に刃をぴったり合わせます。

ホーニングガイドに刃を差し込む
刃を差し込んだら、ホーニングガイド側にあるネジを締め付けて刃を固定します。その後、角度設定治具を取り外せば準備完了です。

準備完了
この時点で刃を横から見ると、刃が砥石にあたる角度が設定角度(今回の場合は25度)ぴったりになっていることがわかります。

刃が設定した角度で砥石に接している
ここまでの一連の操作を動画にしたものがこちらです。
あとは、この状態のまま砥石上でホーニングガイドと刃を前後に動かせば、刃を研ぐことができます。
中砥石で研ぐ様子、仕上げ砥石で研ぐ様子をそれぞれ動画にしました。
ここで使っている砥石は『黒幕』シリーズの#1000と#8000です。この二つさえあれば、十分に実用的な切れ味が得られます。
なお、研ぎで重要なのは砥石の研ぎ面を平面にすること、そして砥石がぐらぐら動かないことです。
研ぎ面を平面にするためには、平面精度の高いダイヤモンド砥石(アトマエコノミー)を使います。タイヤモンド砥石とすり合わせることで研ぎ面を平面にしているわけです。これはできるだけこまめに行うようにしてください。
砥石がぐらつかないようにするためには、しっかりとした砥石台を使うことが大切です。こちらの記事で砥石台について詳しく紹介していますので、あわせて読んでみてください。
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さらに切れ味を追求するなら
刃研ぎは、基本的には砥石で行うものです。中途石、仕上げ砥石、超仕上げ砥石・・と砥石を変えて研いでいくことになります。
しかし超仕上げ砥石はそれなりに高価なので、代わりに『革砥(ストロップ)』を使うという方法もあります。剃刀やナイフを扱う方は馴染みがあるかもしれません。

革砥(ストロップ)とコンパウンド
使い方は簡単で、革砥(ストロップ)にコンパウンドを塗っておき、その上をホーニングガイドにセットした刃を滑らせるだけです。
重要なのは動かす方向で、必ず引いて研いでください。押して研ぐと革砥が切れてしまいます。数回引くだけで鉋の刃は鏡面になり、抜群の切れ味になります。
刃を研ぐ頻度
刃を研ぐ頻度は、どの程度刃を酷使したかによりますが、早めに研ぎなおした方が楽なことが多いです。
面倒に思えるかもしれませんが、早めに研ぎなおしをすれば仕上げ砥石で少し研ぐだけで切れ味が復活しますので数分の作業で終わります。切れ味が大きく低下してから研ぎなおしをすると中砥からの研ぎなおしが必要になるため、余計に時間がかかることもあります。
研ぎなおしの頻度については使い方や研ぎ方によっても変わってきますので、自分なりの最適なバランスを見つけてみてください。
西洋鉋の手入れと保管
西洋鉋は鉄製の道具のため、手入れせずに放置しておくとサビが発生してしまいます。
そのため、使い終わった西洋鉋は必ず手入れをしてから保管するようにしてください。主なポイントを挙げておきます。
分解して、エアダスターで木くずを払う

エアダスターで木くずを払う
まずは西洋鉋を分解して、エアダスターで木くずを吹き飛ばします。隅や隙間に木くずが詰まるので、エアダスターで勢いよく吹き飛ばすのがおすすめです。
木くずを吹き飛ばしたら、固く絞った濡れ雑巾で拭き上げて汚れをふき取っておきます。
刃を研いでおく

使用後の刃はヤニで汚れることが多い
使用後の刃は潰れたり欠けたりしているものです。それだけでなく、ヤニがついてさび付いてしまうこともあります。
そのため、使った後はすぐに刃を研いでおくのが理想です。
研ぎ方については上で紹介していますので、ぜひこまめに刃を研ぐようにしてください。
油をすり込む

西洋鉋に椿油をすり込む
綺麗に拭き上げて、刃を研いでおけばすぐに錆びることはないはずですが、保管の仕方によっては湿気などが原因でさびることがあります。
それを防ぐために、すべての部品に油を刷り込んでおきます。どのような油でも大丈夫ですが、私は刃物用の椿油を使っています。
空気を遮断して保管

西洋鉋を収納する箱
油を刷り込んだら、できるだけ空気に触れないように保管します。
私は西洋鉋専用の箱を自作してしまっていますが、こうしておけばしばらく使わなくても錆びることはありません。
箱が無い場合は防錆紙に包んでおけば安心です。
もし汚れがついたりサビが発生したら早めに手当てしましょう。サビはCRE5-56などで磨けば綺麗になります。真鍮部分は次第に曇ってきますが、ピカールで磨けば新品同様にきれいになります。

まとめ
西洋鉋は日本ではあまり知られていませんが、まったくの初心者でも扱えるというのがメリットで素晴らしい道具です。
初心者でも簡単に刃を研ぐことが可能で精度の高い加工ができるようになるため、『正確な直角加工』や『留め切り加工』なども簡単かつ正確にできるようになります。
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ただし初期品質の良いものを購入しないと逆に苦労してしまうため、どうしても高価な買い物にはなってしまいます。
西洋鉋を使わずに高精度の加工をするとなると和鉋を使うしかありませんが、和鉋の調整は相当な時間をかけて練習しなければ難しいです(私は現在修行中)。
調整のために必要となる各種道具(各種砥石、金盤、立ち鉋、下端定規、金床など・・)を揃えるにもコストはかかりますので、トータルで考えると西洋鉋を買ったほうが安いという考え方もできるかもしれません。
また、コストをかけず手軽に始めたいのであれば、まずは以前紹介した『替え刃式鉋』を使うというのも手です。替え刃式鉋で物足りなくなってきたときに、あらためて西洋鉋のことを思い出してみてください。
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替え刃式鉋(かんな)はDIY初心者におすすめ!面取りの方法など、詳しい使い方を紹介します
替え刃式鉋は、初心者に特におすすめできる鉋です。比較的安く手に入れることができ、扱いが簡単で、DIYの仕上がりが確実に良くなります。替え刃式鉋の仕組みと使い方について詳しく紹介します。
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まとめると、
- 切れ味と精度を妥協してコストを抑えるなら『替え刃式鉋』
- コストをかけてでも、かんたんに精度の高い加工を行いたいのならば『西洋鉋』
- あえて職人の道に進み、腕を上げたいのなら『和鉋』
という選択肢があることになります。ぜひご自身のDIYスタイルに合うものを探してみてください。
最後に、西洋鉋の第一人者である杉田豊久氏と直接お話しする機会がありましたので、その時の写真で締めます。
杉田氏にはこの記事も読んでいただいており、コメントもいただきましたので掲載させていただきます。

カンナについて私が感じたことです。自動車に置き換えてみるとよく分かると思います。
ポルシェやフェラーリが西洋カンナです。高性能な自動車なのに私たち誰でも運転できます。
日本のカンナはF1カーで、更に性能は高いのですが、プロ(職人)のドライバーにしか運転できません。
誰もが使え同じ結果を出せる、つまり初心者を含め、誰でも向こうが透けて見えるほど薄いカンナ屑が出せる西洋カンナは刃の研ぎ易さや台直しが要らない事など、総合性能が高いカンナといえるのではないでしょうか。
杉田さんありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします!

杉田豊久氏とお会いすることができました。DIYショー2019にて