西洋鉋は初心者にもおすすめ! ~購入方法、使い方、メンテナンス方法について

私が使用しているブロックプレーン

さくや(@sakuyakonoha77)です。

DIYをしていると、ノコギリだけでは十分な精度が出せなくて困ることがあります。そんなときに悩みを解決してくれる道具が、鉋(かんな)です。

鉋と言えば日本の大工道具ですが、『西洋鉋(せいようかんな)』という道具もあるのをご存じでしょうか?

日本ではあまり知られていませんが、扱いがとても簡単なのでDIY初心者に特におすすめできます。

この記事では私が使っている西洋鉋を紹介しつつ、西洋鉋のメリットとデメリット、使い方と刃の研ぎ方などのメンテナンス方法についてまとめます。

こんな方におすすめ

  • 西洋鉋とは何か、日本の鉋との違いについて知りたい方
  • 西洋鉋の特徴、メリットとデメリットについて知りたい方
  • 西洋鉋の使い方と、刃の研ぎ方などのメンテナンス方法について知りたい方

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和鉋(わかんな)と西洋鉋(せいようかんな)

私の愛用している和鉋

私の愛用している和鉋

鉋(かんな)といえば大工道具、ということはDIYをされている方なら知っているかと思いますが、和鉋西洋鉋があることはあまり知られていません。

実は引いて使うタイプの和鉋は世界的に見れば少数派で、主に日本で使われています。よく知られている台鉋も、日本で用いられるようになったのは江戸時代以降で歴史の浅い道具です。

さくや
とはいっても最近は海外でも和鉋が知られていて、海外にも和鉋を使う職人がいるよ

一方、西洋では押して使うタイプの西洋鉋が主に使われています。このタイプの鉋は紀元前のローマのころから使われていて、2000年以上の歴史がある道具です。その頃の道具に興味がある方は、次のリンクを読んでみてください。

[sc_Linkcard url="http://www.handplane.com/906/the-ancient-roman-plane-of-yorkshire-wolds/" ]

もちろん西洋の方々は自分たちの道具を”西洋”鉋とは呼ばず、単に鉋(英語ではplane)と呼んでいます。

和鉋と西洋鉋は押す・引く以外にも様々な特徴の違いがあります。ここからは西洋鉋と和鉋の違いに着目しつつ、西洋鉋の特徴とメリットデメリットについてまとめていきます。

西洋鉋の特徴

西洋鉋(Lie-Nielsen Block Plane)

西洋鉋(Lie-Nielsen Block Plane)

西洋鉋の特徴は、メンテナンスが容易で初心者でもかんたんに扱えるという点です。

西洋鉋が簡単に使えるのは①刃研ぎがかんたんであること、②台の調整がほぼ不要であることが大きな理由です。

①西洋鉋は、刃が研ぎやすい

西洋鉋は、適切な道具を使えば初心者でも刃を研ぐことが可能です。初心者が鉋を使う上での最大のハードルは刃研ぎなので、それが解決できるのは非常に大きなメリットです。

その理由は西洋鉋と和鉋の刃の形状の違いにあります。西洋鉋と和鉋の刃を比較した写真を見てみてください。

和鉋の刃(上)と西洋鉋の刃(下)

和鉋の刃(上)と西洋鉋の刃(下)

和鉋の刃は厚みがありテーパー(先細り型)になっている一方で、西洋鉋の刃は厚さも幅も一定です。材質が異なるという点も大きな違いですが、これについては後述します。

刃の厚さと幅が一定だと何が嬉しいのか。それは『ホーニングガイド(研ぎガイド)』が使えることです。むしろ西洋鉋はホーニングガイドを使うことを前提に作られていると言っても過言ではないはずです。

ホーニングガイドを使えば、刃を簡単に研ぐことができる

ホーニングガイドを使えば、刃を簡単に研ぐことができる

ホーニングガイドを使えば初めてでも正しく刃を研ぐことが可能です。私が初めて西洋鉋の刃を研いだときですら、下の写真のように透けるほどの薄さで木を削ることができました。

西洋鉋の削りくず

西洋鉋の削りくず(鉋の下に三枚あり、透けているのがわかります)

和鉋にこういうガイドがあるかというと、実はあります。『初弘グリンテック』です。

和鉋の刃を研ぐ専用ガイド『初弘グリンテックK2』

和鉋の刃を研ぐ専用ガイド『初弘グリンテックK2』

これを使えば初心者でも和鉋の刃を研ぐことができるようになります。鉋身のテーパーに合わせて固定可能で、任意の研ぎ角設定、さらにわずかな角度調整ダイヤルなどがあり、自由自在に研ぐことが可能です。和鉋の刃を正確に研ぎたいのであれば最適です。

さくや
このガイドはとても高価なのが残念・・。すごく良い道具で、値段分の価値はあると思うんだけどね

しかし残念ながら、和鉋は刃を研げれば使えるというわけではありません。台直し裏出し裏押し裏金の調整など、刃を研ぐ以外の様々な調整作業が必要です。

鉋の刃口埋めはかなり大変な作業

鉋の刃口埋めはかなり大変な作業

また、鉋刃使っているうちに刃口(刃の周囲)が凹んだり広がってきたりしまうため、上の写真のように刃口を埋め直す作業も必要になります。

これらの調整は初心者にとっては非常に難しい作業で、かなりハードルが高いと言えます。

①’【デメリット】西洋鉋は、和鉋と比較すると切れ味が劣り、長切れしない

西洋鉋の刃はホーニングガイドを使えば研ぐことができますが、和鉋と比較すると切れ味が劣り、切れ味が長持ちしないというのがデメリットです。

これは和鉋と西洋鉋の刃の材質と構造の違いが影響しています。

和鉋の刃の特徴

和鉋の刃は欧米の刃物とは異なり、『付け鋼(つけはがね)』と呼ばれる独特の造りをしています。『地金(じがね)』と呼ばれるやわらかい鉄と、『(はがね)』と呼ばれる硬い鉄を張り合わせる方法です。

鋼は硬すぎるので研ぐのが大変です。そのため鋼だけで作った鉋刃は研ぎで苦労してしまいます。

そこで和鉋は、鋼は刃先のみで薄いものを使用し、やわらかくて研ぎやすい地金で厚みを持たせたというわけです。

こうすることで鋼を節約しつつ、刃に厚みを持たせて研ぎやすくし、かつ切れ味の良い刃を実現しています。

地金は炭素をほとんど含まない柔らかい鉄です。実はこれはただの鉄ではなく、明治時代以前に作られた古い鉄(古い鉄橋を取り壊したときの廃材や、船の錨など)を再利用しています。明治以降に作られた新しい鉄は鉋には向かないのです。

もう一つの鋼の方は、地金とは異なって炭素を多く含む鉄です。炭素以外の不純物を混ぜて鉄の性質を変える場合もあります。これらの鋼は非常に硬いため、これで作られる刃はとても鋭く切れ味が長持ちします。

ただし昔は鋼が高価だったので、鋼だけで鉋の刃を作ることはあまりに贅沢でした。そういう理由もあって、付け鋼という独特の作られ方が主流になったようです。

このあたりのことを、実際に鍛冶屋さんを訪問してお話を伺ってきたレポートがあります。興味がある方はこちらの記事も読んでみてください。

鉋鍛冶職人の中野 武夫さん
そうだ、鉋探しの旅に出よう(2) ~和釘づくり体験と鉋鍛冶訪問

続きを見る

西洋鉋の刃の特徴

一方で西洋鉋は地金が無く、鋼のみで造られる『全鋼(ぜんこう)』と呼ばれる刃を使っています。和鉋の鋼と比べるとやわらかい鋼(A-2鋼など)を使っているため比較的研ぎやすいものの、切れ味は和鉋ほどではなく長持ちもしません

こう書くと西洋鉋の性能は大丈夫なのかと不安になるかもしれませんが、DIYレベルであれば全く問題はありません。むしろ研ぎやすいというメリットが大きいため、初心者の場合は和鉋よりも良い切れ味を実現することができます。

なお、西洋鉋用の『付け鋼(青紙)の替え刃』というものも存在します。私が知る限りではStanley製の西洋鉋向けに販売されている『カルタブルー』と、大工道具の曼陀羅屋が販売している西洋式鉋刃があります。

西洋の刃で満足できなくなったときは刃を日本製のものに交換することもできます。ただし西洋鉋の刃はメーカー互換性がありませんので、メーカーに合った替え刃を選ぶ必要がありますので注意してください。

②西洋鉋は、台の調整が不要

西洋鉋は台の調整がほぼ不要です。和鉋と違って西洋鉋の台は鉄でできているので、ちょっとやそっとでは狂いません。

ただしこれはメリットである一方でデメリットでもあり、西洋鉋が高価になってしまう原因でもあります。

詳しい説明をする前に、『台の調整ってなに?』という方のために捕捉します。

鉋台の精度と調整について

鉋は、和鉋も西洋鉋も台に刃を取り付けたものと考えることができます。台に合わせて木材を削るので、台が平面であれば木材も平面になるという理屈です。

したがって平面に削る上で最も重要なのは、鉋台の平面精度となります。

しかし和鉋の場合、台も木製あるため使っているうちに凹みや歪みが出てきます。そうなると平面で削ることができなくなるため、台を平面に修正するという作業が必要になります。

さくや
どんなに研いで調整した最高の鉋も、一日経つと台が歪んで切れなくなることがあると言われるくらいだ

一方で西洋鉋の台は鋳鉄で作られているため、使っているうちに台が歪むということはまずありません

しかしそれはそもそも台が狂っていなければの話です。最初から台が歪んでいる場合は修正が必要ですが、鉄を削って調整する作業になりますので、木製の台以上に難しい作業になります。

したがって西洋鉋を使う場合、最初に精度の高い(歪みのない)鉋を手に入れることが重要となります。西洋鉋は様々なメーカーから販売されていて価格も様々ですが、値段の違いは精度の違いと考えることができます。

おすすめの西洋鉋メーカー

ではどのメーカーの鉋がよいのかと言えば、初心者の方には私も使用しているLie-nielsen(リー・ニールセン)製のものをお勧めします。

Lie-nielsen製の鉋は初期精度が非常に高く、本体の平面精度は±0.0015インチ(0.038mm)以内で加工されています。側面の直角精度も高く、スコヤで確認する程度では歪みを見つけることができません。

高い直角精度

直角精度が高く、平面にも歪みが無いことがわかる

本体はダクタイル鋳鉄製で、鋳造時のストレス(癖)も除去してあるため使っていくうちに歪むことがありません。説明書には『生涯使える道具』と記載されています。

とはいっても、Lie-nielsen製の西洋鉋を使う方々に話を聞いてみたところ、若干の個体差があることが確認できています。もし購入した西洋鉋に歪みがあることに気づいたら、すぐに販売元に連絡すれば返品・交換してもらえることも多いようです。

②’【デメリット】西洋鉋は高価

西洋鉋は最初に良いものを購入する必要があるため、どうしても高価な買い物になってしまいます。これが西洋鉋最大のデメリットです。

Lie-nielsen製と、よく知られているStanley製の鉋では同等機種でもおよそ2倍の価格差があります。価格の違いは精度の違いに直結していますので、精度の低い製品を買うのであればそれを修正できるかどうかが問題になります。

自分で修正することができるならばOKです。しかしDIY初心者にとっては正しく修正することも難しいはずで、そこで挫折してしまっては元も子もありません。

DIY初心者こそ、まずはキチンと調整された道具で正しい使い方を身に付けるためにも、最初の一台目は良いものを購入することをお勧めします。

西洋鉋の購入方法

日本で西洋鉋を購入する方法は二つあります。店頭、もしくは通信販売での購入です。

店頭で購入

店頭で購入できるといったものの、西洋鉋を販売している店舗は殆どありません。私が知る限りでは東急ハンズ新宿店のみです。

『ベンチプレーン』『ショルダープレーン』『ブロックプレーン』『ルータープレーン』『ホーニングガイド』などが販売されていました・・が、最近は売り場面積がめっきり小さくなって、申し訳程度に陳列されるだけとなってしまいました。

はろ子
あらら・・残念
仕方ないよ。店員も商品説明できないだろうし、誰が買うのかって話だからね
さくや

もし関東にお住まいの方であれば、実際に店舗で実物を見てみるのがお勧めです。大きさや質感などがわかりますので、購入するかどうかの判断材料になるはずです。

店舗に行くのが難しい場合は、杉田氏の書籍がとても参考になります。こちらの2冊に西洋鉋のことが詳しく書かれていますので、是非参考にしてみてください。※書かれている内容はほぼ同じなので、どちらの書籍でも大丈夫です。

通信販売で購入

Lie-nielsenはアメリカの企業ですが、日本でもLie-nielsen製西洋鉋の輸入と販売を行っているサイトがありますので、こちらで購入可能です。取扱商品の詳しい説明もありますので、ぜひ見てみてください。

さくや
ToolsGRの社長と何度もやり取りしたことがあるけど、いつも丁寧に対応してくれるよ。信頼して大丈夫!

もし日本の代理店では手に入らない製品が欲しい場合はLie-nielsen公式サイト(英語)を参照することになります。

2022年現在、コロナ禍の影響でどこのメーカーも生産量を落としています。Lie-Nielsen、Veritas、Stanleyなども深刻な影響を受けており、日本代理店(オフ・コーポレーション、Tools.GR、MIRAIなど)への輸出を完全にストップしているとのことです。

海外メーカーから直接購入することは可能なので、どうしても欲しい場合は各メーカーのWebサイトを確認してみてください。

西洋鉋の種類

和鉋にも『平台鉋(ひらだいかんな)』『豆鉋(まめかんな)』『作里鉋(さくりかんな)』・・があるように、西洋鉋にも多くの種類があります。

それぞれ用途が異なるのですが、DIY初心者が最初の一台として買うならば『ブロックプレーン』が最適です。

ブロックプレーン(Block plane)

アジャスタブルマウス・ローアングル・ブロック・プレーン [60-12]

アジャスタブルマウス・ローアングル・ブロック・プレーン [60-12]

ブロックプレーンは特に木口削りを得意とする鉋で、小型で使いやすいというのが特徴です。実際に私がブロックプレーンを使ってパイン材を削ったときの写真がこちらです。

木口を削るブロックプレーン

木口を削るブロックプレーン

木口の削りくず

木口の削りくず

木口が薄くスライスされていることがわかります。このように、木口面であっても精密な加工が可能なのがブロックプレーンです。

もちろん木口以外の削りも可能で、木端などの目違い(段差)払い、狭い幅の平面削りなど、DIYで必要となる細かい作業で力を発揮します。

大きな面を平らにならすのには不向きなので、その場合は他の西洋鉋(スムースプレーン、ジャックプレーンなど)を使うことになります。大きな鉋は価格も高いので、まずはブロックプレーンで慣れてみて、順次買い足すのがいいでしょう。

ベンチプレーン(Bench plane)

西洋の標準的な鉋『ベンチプレーン(Bench Plane』

西洋の標準的な鉋『ベンチプレーン(Bench Plane』

ベンチプレーンは、標準的な平台鉋に相当します。大きさは中くらいで、比較的大きい面積の大きい削りに向いています。最近ではベンチプレーンではなくスムースプレーンと呼ばれることもあり、その名のとおり仕上げ削りに最適です。

上の写真ではAmazonの安価な鉋を使用しています。安価な鉋ですが、しっかり研げばかなりの切れ味になります。しかしとにかく切れ止むのが早く、頻繁に研がなければならないので正直おすすめはできません。

さくや
聞くところによると、刃の質はStanleyのものと同程度らしいね
中堅くらいの切れ味はあるってこと?
はろ子
さくや
いや・・どちらかというと、Stanleyも期待しないほうがいいという話だと思ってる

プラウプレーン(Plow/Plough plane)

西洋の溝カンナ『プラウプレーン(Plow plane)』

西洋の溝カンナ『プラウプレーン(Plow plane)』

プラウプレーン』は、西洋の溝切り鉋です。木材に一定の太さ・深さの溝を掘ることに特化しています。

アメリカ英語ではPlow、イギリス英語ではPloughと表記します。どちらも鋤(すき)という意味です。

和鉋と比較するならば機械作里鉋(きかいじゃくりかんな)が最も近いと言えます。木材の側面にフェンスを当てることで正確な位置に溝を掘ることができます。

しかし機械作里鉋は刃を交換できないのに対し、プラウプレーンは様々な幅や形の刃に交換することができます。しかも一定以上の深さにならないよう、深さストッパーも装備しています。一台で様々な溝幅に対応でき、幅も深さも正確に加工することができるというわけです。

そしてもちろん、この鉋の刃はホーニングガイドで研ぐことができます!

初心者でも簡単に刃を研ぐことができ、素晴らしい切れ味を発揮させることができるというのがメリットです。

プラウプレーンについては、次の記事で詳しく紹介しています。とても魅力的な道具なので、ぜひ読んでみてください。

西洋の溝カンナ『プラウプレーン(Plow plane)』
溝を掘るための高機能な鉋、プラウプレーン(plow plane)とは

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ルータープレーン(Router plane)

溝の底さらい専門、ルータープレーン

溝の底さらい専門、ルータープレーン

この小さな鉋は『ルータープレーン』と呼ばれるものです。現在のルーター(電動工具)が登場する以前の古い道具と言われていますが、19世紀末頃に登場したものなので鉋の歴史で言えば新しい部類に入ると思っています。

電動工具が登場し始めた20世紀半ばころにはほぼ生産されなくなってしまいましたが、21世紀に入ってからこの道具の価値が見直され、近年は新しい商品が生産・販売されるようになってきました。

このルータープレーンの特徴は、なんといっても『完璧に同じ深さに掘ることができる』という点です。細い溝であれば正確に掘り揃えることができ、ホゾ(※ホゾ穴ではない)を横から掘れば正確な幅のほぞを創り出すことができます。蝶番の埋め込み穴を掘るときも、この道具は大活躍します。

なお、有名メーカーのルータープレーンは現在入手困難ですが、新興メーカーであればそれなりに購入可能なのも嬉しいところです。

二つ目の商品は刃がL字型になっていない『魔女の歯(Witch's tooth)』と呼ばれるタイプの物ですが、これは実はほぞ穴を掘るときに大活躍するものです。

さくや
ほぞ穴の底、入隅を掘れるのは『魔女の刃』タイプだけなんだよ

ラベットプレーン(Rabbet Plane)

ラベットプレーン(Stanley No.78)

ラベットプレーン(Stanley No.78)

これは『ラベットプレーン』と呼ばれる西洋鉋です。もっと小型の、ブロックプレーンに近い形のラベットプレーンもあります。

ラベットプレーンとは、和鉋で言えば際鉋(きわがんな)に相当します。木材の入隅、内側に窪んだ角を削るための道具で、段欠きやホゾ加工の時に必要になります。

ラベットプレーンを使うと、ホゾの厚さ調整や入隅の微調整が可能

ラベットプレーンを使うと、ホゾの厚さ調整や入隅の微調整が可能

写真で紹介しているスタンレーNo.78は、刃の取り付け位置を中央付近と先端のどちらにも取り付けられるようになっているのが特徴で、先端側に取り付ければチゼルプレーン(chisel plane)という先端に刃を持つ鉋に変身します。

また、このラベットプレーンはプラウプレーンと同様に、深さストッパーと横のフェンス、機械作里鉋のツメに相当するニッカー(Nicker)と呼ばれる刃を持っており、キワに切り込みを入れつつ削ることができるのも特徴です。

深さストッパーとニッカー

深さストッパーとニッカー

西洋鉋の仕組みと使い方

西洋鉋は和鉋と比較すると構造が複雑ですが、使っていると自然と憶えてしまうものです。経験や勘に頼らなくても使えるよう作られているので、初心者でもすぐに使いこなせるようになります。

部品の説明

以下では、西洋鉋のなかのブロックプレーンを例に詳しく説明していきます。

ブロックプレーンは以下の部品で構成されています。

西洋鉋のパーツ

西洋鉋のパーツ

  1. Bronze cap iron(キャップ)・・・持ち手になる部分。掌にフィットする形になっています。cap ironとは裏金のことを意味するようですが、和鉋の裏金のような機能は無い気がします。
  2. Spinwheel(スピンホイール)・・・キャップと刃の間で『突っ張り棒』のように働き、刃を押し付けて固定します。
  3. Brass adjustment lever(調節レバー)・・・刃口の広さを調整するレバー。
  4. Brass lock screw(ロックねじ)・・・刃口調整レバーを固定するネジ。
  5. Adjustable mouth plate(刃口調整プレート)・・・和鉋の『木っ端返し』に相当。前後に動かし、刃口の広さを調整できるのが特徴。
  6. Blade adjuster nut(刃調整ナット)・・・刃の出し入れを調整するネジ。
  7. Body(本体)・・・鉋の台。
  8. Blade(刃)・・・鉋の刃。
はろ子
わわわ・・部品が多くてわけわかんない
最初はそう思うけど、大丈夫!すぐに手に馴染むから
さくや

組み立て方

西洋鉋の組み立て手順は、言葉で説明するよりも見た方が早いですね。簡単なGIF動画ですが、次のようになります。

西洋鉋組み立て

西洋鉋組み立て

さくや
組み立てはかんたん。ひとつひとつの部品がとてもしっかりしているので、組み立てていて楽しいよ

刃の調整方法

鉋の刃を出し入れする場合、和鉋ならば鉋頭や台頭を叩いて調整しますが、西洋鉋の場合は⑥刃調整ナットで調整します。

刃の出し入れは後ろのネジで調整

刃の出し入れは後ろのネジで調整

刃調整ナットを時計回りに回せば刃が前進し、反時計回りに回せば後退します。これを利用して刃の出し入れを行います。

和鉋の場合は鉋台を目の高さに上げて‥というように刃の出具合を直接目で確認しますが、西洋鉋の場合は直接確認しなくても調整可能です。

西洋鉋を木材の上に置き、軽く前後に動かして刃が引っかからなければナットを時計回りに回す、引っかかりすぎるようであれば反対に回す・・という調整を行います。最初は戸惑いますが、慣れれば自然と調整できるようになります。

刃を出す量が決まったら②スピンホイールを回して刃を固定します。このとき刃の左右の傾きも調整可能なので、削ってみて左右で偏りがあるようならばここで微調整してください。

なお、このときスピンホイールは回しすぎないように気を付けてください。さきほど紹介した杉田さんから聞いたお話では

刃を固定した状態でもナットを回せば刃が前後し、少し強く力を入れれば手で刃の左右の傾きも直せる程度にスピンホイールを締めます。メーカーではスピンホイールが刃に当たったところから約1/4回転締めるぐらいと言っています。』

とのことでした。最初はついつい強めに締め付けてしまいますが、その必要は無いということですね。ムキになってスピンホイールを回さないように注意しましょう(笑

刃口の調整方法

ブロックプレーンは刃口の大きさを調整できることが特長です。

刃口が調整可能

刃口が調整可能

刃口の調整は③調整レバーと④ロックネジで行います。刃先に当ててしまうと刃がいたんでしまうので、刃口を動かす場合はよく注意してください。

刃口の大きさは、主に逆目防止に影響します。刃が木目に食い込んでしまうのが逆目掘れ(さかめぼれ)で、慣れないうちはこれで木をボロボロにしたりするものです。

それを防ぐためには、刃が木目に食い込まないように刃口(mouth plate)を極限まで刃に近づけるようにします。当然、刃先にぶつかると刃先を傷めてしまうので、刃先にぶつからない程度にです。

仕上げ削りのときは、刃口を見えないくらいに狭くする

仕上げ削りのときは、刃口を見えないくらいに狭くする

上の写真は、実際に仕上げ削りをしたときの刃口です。肉眼では刃口の開きが見えません。電灯にかざすと、わずかに光が漏れて見える程度です。この程度まで刃口を狭くして、刃を出す量を小さくして、刃の切れ味を良くすれば、逆目であってもきれいに切れるようになります。

西洋鉋の使い方と、削りやすくするための治具(ジグ)

西洋鉋は手前から奥に押して使います。和鉋は奥から手前に引いて使いますので、西洋鉋とは逆です。

最初は力加減がわかりにくいかもしれませんが、使っていくうちに慣れていきますので心配いりません。

西洋鉋の動かし方

西洋鉋は、手のひらで包み込むように持って片手で動かします。

西洋鉋の動かし方

西洋鉋の動かし方

力を入れて押し削りする際、削る対象が動いてしまうとうまく削ることができません。そのため削る対象が動かないようにするための道具が必要になります。たとえばこういった台です。

治具の使い方

治具の使い方

板の前後にフックとなる木材を取り付けただけのもので、ベンチフックと呼びます。ちなみに西洋鉋だけでなく彫刻刀やノミなど、押し削りする道具全般で使うことができます。

西洋鉋の性能を最大限引き出したいのであれば、さらに高機能のシューティングボードと呼ばれる専用の削り台があると便利です。

西洋鉋用シューティングボード

西洋鉋用シューティングボード

これも自作可能ですので、こちらの記事で詳しく紹介しています。

フェンス可動式鉋用削り台
フェンス可動式の鉋用削り台(Shooting Board)の機能と作り方

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木口を削るときの使い方

木材の木口を削る場合は要注意です。ブロックプレーンは木口削りが得意な道具ではありますが、木口をそのまま削ろうとすると木材の端が割れてしまうことが多いためです。

そのため木材の端から中央に向けて削るようにするか、木口削り専用のジグを作る必要があります。先ほどのシューティングボードも木口削りが可能な治具のひとつです。

治具によっては、木口削りの際に特定の角度で削るようにすることもできます。

木口削り(留め切り)専用ジグ

木口削り(留め切り)専用ジグ

上の写真は、木材の木口を45度で削るための専用ジグです。額縁を作るときなど、45度(留め)で削る際に威力を発揮します。こちらの記事で詳しく紹介していますので、合わせて読んでみてください。

あわせて読みたい
ノコギリで正確に留め切りをする方法 ~角度調整式治具の作り方

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西洋鉋の刃の研ぎ方

鉋は刃を研げるかどうかが非常に重要ですが、西洋鉋の場合は『ホーニングガイド』と呼ばれる専用の道具を使うことで、初心者でもかんたんに研ぐことができます

西洋鉋の刃研ぎでおすすめのホーニングガイド(研ぎガイド)

ホーニングガイドは、シンプルなものであればホームセンターでも『研ぎガイド』などの名前で販売されています。

しかしこの研ぎガイドは研ぎ角度の設定ができないこと、左右に傾くため安定しないことから、扱いは難しく上級者向けです。

そこで、私が使っている『Veritas マークII ホーニングガイド』を紹介します。

Veritas製のホーニングガイド

Veritas製のホーニングガイド

注意ポイント

Veritas マークII ホーニングガイドはAmazonでも販売されていますが、価格が高騰しているようです。

このホーニングガイドの特徴は三つあります。

  • 刃の角度を正確に設定することができる治具が付属している
  • 刃を上下で挟み込む構造のため、薄い西洋鉋の刃でもしっかり固定できる
  • ローラーが幅広で、研ぎの際に手ブレせず安定するため正確な刃付けができる

研ぎ角度の設定方法

Veritas マークII ホーニングガイドに付属する治具を使えば、任意の角度で刃物を研ぐことができるようになります。

刃の角度を設定するための治具

刃の角度を設定するための治具

見てわかるとおり10度~54度まで様々な目盛りがあり、下についている設定金具をセットすることで任意の角度で刃物を研ぐことができます。対応できるのは鉋の刃だけでなく、挟み込むことで固定できる刃物であれば様々なもので利用可能です。

さくや
ちなみに、私は一分鑿(いちぶのみ;刃の幅3mm)ですらこのホーニングガイドで研ぐよ

刃の角度は切れ味だけでなく、刃の耐久性や削る材料との相性に直結します。初心者が刃を研ぐとどうしても刃の角度が変わってしまうものですが、このホーニングガイドがあればその心配もありません。また、既に角度が狂ってしまった刃物を修正する際にもこのホーニングガイドは大活躍します。

ホーニングガイドを使った鑿の研ぎ方についてはこちらで詳しく紹介しています。鑿を持っている方は是非読んでみてください。

治具(研ぎガイド)を使った鑿の研ぎ方
初心者のための鑿(のみ)の研ぎ方 ~治具(研ぎガイド)を使う方法について

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ホーニングガイド(研ぎガイド)の使い方

ブロックプレーンの刃の角度は25度です。まずは角度設定治具の目盛りを25度に合わせます。

角度設定用の治具で任意の角度を設定したら、ホーニングガイド本体に治具を取り付けます。

角度設定治具を取り付け

角度設定治具を取り付け

組み立てたものを裏返し、ホーニングガイドの挟み口に鉋の刃を差し込み、角度設定治具の右端と角度設定金具に刃をぴったり合わせます。

ホーニングガイドに刃を取り付ける

ホーニングガイドに刃を差し込む

刃を差し込んだら、ホーニングガイド側にあるネジを締め付けて刃を固定します。その後、角度設定治具を取り外せば準備完了です。

準備完了

準備完了

この時点で刃を横から見ると、刃が砥石にあたる角度が設定角度(今回の場合は25度)ぴったりになっていることがわかります。

刃が設定した角度で砥石に接している

刃が設定した角度で砥石に接している

ここまでの一連の操作を動画にしたものがこちらです。

あとは、この状態のまま砥石上でホーニングガイドと刃を前後に動かせば、刃を研ぐことができます。

中砥石で研ぐ様子、仕上げ砥石で研ぐ様子をそれぞれ動画にしました。

ここで使っている砥石は『黒幕』シリーズの#1000と#8000です。この二つさえあれば、十分に実用的な切れ味が得られます。

なお、研ぎで重要なのは砥石の研ぎ面を平面にすること、そして砥石がぐらぐら動かないことです。

研ぎ面を平面にするためには、平面精度の高いダイヤモンド砥石(アトマエコノミー)を使います。タイヤモンド砥石とすり合わせることで研ぎ面を平面にしているわけです。これはできるだけこまめに行うようにしてください。

砥石がぐらつかないようにするためには、しっかりとした砥石台を使うことが大切です。こちらの記事で砥石台について詳しく紹介していますので、あわせて読んでみてください。

砥石台の作り方(自作方法)
自作砥石台(研ぎ台)の作り方《シンク固定式・サイズ調整可能ストッパー付き》

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さらに切れ味を追求するなら

刃研ぎは、基本的には砥石で行うものです。中途石、仕上げ砥石、超仕上げ砥石・・と砥石を変えて研いでいくことになります。

しかし超仕上げ砥石はそれなりに高価なので、代わりに『革砥(ストロップ)』を使うという方法もあります。剃刀やナイフを扱う方は馴染みがあるかもしれません。

革砥(ストロップ)とコンパウンド

革砥(ストロップ)とコンパウンド

使い方は簡単で、革砥(ストロップ)にコンパウンドを塗っておき、その上をホーニングガイドにセットした刃を滑らせるだけです。

重要なのは動かす方向で、必ず引いて研いでください。押して研ぐと革砥が切れてしまいます。数回引くだけで鉋の刃は鏡面になり、抜群の切れ味になります。

参考までに、シャプトン#8000で仕上げた刃と、革砥で仕上げた刃の比較写真を紹介します。顕微鏡の倍率はx100です。

シャプトン#8000で仕上げた刃の顕微鏡写真

シャプトン#8000で仕上げた刃の顕微鏡写真

革砥で仕上げた刃の顕微鏡写真

革砥で仕上げた刃の顕微鏡写真

1枚目の写真はシャプトン#8000で仕上げた刃の刃先、2枚目の写真が革砥で仕上げた刃の刃先です。革砥で仕上げた方が、刃先のエッジが鋭くなっていることがわかります。

より鋭い切れ味を求めるのであれば、革砥を使うのは手軽で良い方法と言えます。

刃を研ぐ頻度

刃を研ぐ頻度は、どの程度刃を酷使したかによりますが、早めに研ぎなおした方が楽なことが多いです。

面倒に思えるかもしれませんが、早めに研ぎなおしをすれば仕上げ砥石で少し研ぐだけで切れ味が復活しますので数分の作業で終わります。切れ味が大きく低下してから研ぎなおしをすると中砥からの研ぎなおしが必要になるため、余計に時間がかかることもあります。

研ぎなおしの頻度については使い方や研ぎ方によっても変わってきますので、自分なりの最適なバランスを見つけてみてください。

西洋鉋の手入れと保管

西洋鉋は鉄製の道具のため、手入れせずに放置しておくとサビが発生してしまいます。

そのため、使い終わった西洋鉋は必ず手入れをしてから保管するようにしてください。主なポイントを挙げておきます。

分解して、エアダスターで木くずを払う

エアダスターで木くずを払う

エアダスターで木くずを払う

まずは西洋鉋を分解して、エアダスターで木くずを吹き飛ばします。隅や隙間に木くずが詰まるので、エアダスターで勢いよく吹き飛ばすのがおすすめです。

木くずを吹き飛ばしたら、固く絞った濡れ雑巾で拭き上げて汚れをふき取っておきます。

刃を研いでおく

使用後の刃

使用後の刃はヤニで汚れることが多い

はろ子
さ、さびてる~っ!

慌てなくて大丈夫。木のヤニが付くとどうしてもこうなるけど、研げば元通りになるから
さくや

使用後の刃は潰れたり欠けたり、場合によっては錆びたりしているものです。そのため、使った後はすぐに刃を研いでおくのが理想です。

研ぎ方については上で紹介していますので、ぜひこまめに刃を研ぐようにしてください。

油をすり込む

西洋鉋に油をすり込む

西洋鉋に椿油をすり込む

綺麗に拭き上げて、刃を研いでおけばすぐに錆びることはないはずですが、保管の仕方によっては湿気などが原因でさびることがあります。

それを防ぐために、すべての部品に油を刷り込んでおきます。どのような油でも大丈夫ですが、私は刃物用の椿油を使っています。

空気を遮断して保管

西洋鉋を使って作った大留め継ぎの箱

西洋鉋を収納する箱

油を刷り込んだら、できるだけ空気に触れないように保管します。

私は西洋鉋専用の箱を自作してしまっていますが、こうしておけばしばらく使わなくても錆びることはありません。

箱が無い場合は防錆紙に包んでおけば安心です。

もし汚れがついたりサビが発生したら早めに手当てしましょう。サビはCRE5-56などで磨けば綺麗になります。真鍮部分は次第に曇ってきますが、ピカールで磨けば新品同様にきれいになります。

さくや
真鍮部分はあえて磨かずに、鈍色(にびいろ)になるのを楽しむのもありだね

まとめ

西洋鉋は日本ではあまり知られていませんが、まったくの初心者でも扱えるというのがメリットで素晴らしい道具です。

初心者でも簡単に刃を研ぐことが可能で精度の高い加工ができるようになるため、『正確な直角加工』や『留め切り加工』なども簡単かつ正確にできるようになります。

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ただし初期品質の良いものを購入しないと逆に苦労してしまうため、どうしても高価な買い物にはなってしまいます。

西洋鉋を使わずに高精度の加工をするとなると和鉋を使うしかありませんが、和鉋の調整は相当な時間をかけて練習しなければ難しいです(私は現在修行中)。

調整のために必要となる各種道具(各種砥石、金盤、立ち鉋、下端定規、金床など・・)を揃えるにもコストはかかりますので、トータルで考えると西洋鉋を買ったほうが安いという考え方もできるかもしれません。

また、コストをかけず手軽に始めたいのであれば、まずは以前紹介した『替え刃式鉋』を使うというのも手です。替え刃式鉋で物足りなくなってきたときに、あらためて西洋鉋のことを思い出してみてください。

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まとめると、

  • 切れ味と精度を妥協してコストを抑えるなら『替え刃式鉋
  • コストをかけてでも、かんたんに精度の高い加工を行いたいのならば『西洋鉋
  • あえて職人の道に進み、腕を上げたいのなら『和鉋

という選択肢があることになります。ぜひご自身のDIYスタイルに合うものを探してみてください。

  • この記事を書いた人

さくや

DIYと木工と刃物研ぎとキャンプが趣味のシステムエンジニア。賃貸住宅のリビングでもできる『静かなDIY』をテーマにブログを運営しています。