ノコギリで木材を直角に切る方法 ~高精度な直角ガイドの作り方

2019年6月25日

さくや(@sakuyakonoha77)です。

木工系のDIYではノコギリで木材を直角に切ることが頻繁にありますが、ノコギリで正確に切るというのは非常に難しいものです。

はろ子

何回やっても、まっすぐ直角に切れない・・

大丈夫、ちょっとした治具を使えば、誰でもまっすぐ直角に切れるようになるよ!

さくや

そういう時に役立つのが治具(ジグ)です。治具とは、何かを加工するときに補助的に使う道具全般を指します。いわゆるノコギリガイドも治具の一つです。

この記事では、簡単に自作できて効果抜群なノコギリ用治具を詳しく紹介します。

作り方の難易度と直角の精度に応じて

  • まずは簡単なものを作って試してみたい ⇒《初心者向け》ノコギリ用ガイドブロック
  • 作りやすくて実用的なノコギリガイドが欲しい ⇒《中級者向け》ノコギリ用直角ガイド
  • どこまでも厳密で正確な直角が欲しい ⇒《上級者向け》ノコギリ用直角ガイド【角度調整式】

の三種類がありますので、ご自身のレベルに合わせて選んで読んでみてください。

《初心者向け》ノコギリ用ガイドブロック

一番シンプルな治具『ノコギリ用ガイドブロック』
一番シンプルな治具『ノコギリ用ガイドブロック』

一番シンプルな治具は、上の写真にあるようなノコギリ用ガイドブロックです。黒い部分はマグネットになっています。

はろ子

なにこれ。角材・・?

これが治具。これを使うだけで、「ノコギリでまっすぐ切れない~」っていう悩みが解決するんだ

さくや

ノコギリ用ガイドブロックの作り方

作り方はとても簡単です。

適当な長さの角材に、100均で販売されているシール付きマグネットシートを貼り付けただけです。ノコギリの刃はマグネットシートにくっつく、という性質を利用してノコギリガイドにするわけです。

さくや

マグネットシートは消耗品。だから100均のもので十分

ポイント

精度が気になってくると『角材の角はそもそも直角なのか?』と疑問がわいてくるようになります。そうなったときは角材の角をチェックして、正確に直角になっている材料を治具に利用するようにしてください。

ノコギリ用ガイドブロック使い方

このノコギリ用ガイドブロックは、両面テープで材料に貼り付けたり、材料と一緒にクランプしたりして使います。

たとえば大きな木材(2x4材を貼り合わせたもの)の端を垂直に切るときは、

ノコギリ用ガイドブロックのクランプの仕方
ノコギリ用ガイドブロックのクランプの仕方

上の写真のように材料とノコギリ用ガイドブロックを一緒にクランプして、

ノコギリ用ガイドブロックに沿わせてノコギリを動かす
ノコギリ用ガイドブロックに沿わせてノコギリを動かす

マグネットシートにノコギリの刃を貼り付けたまま、前後に動かすと、

ノコギリ用ガイドブロックをつかえば、かなりの精度で垂直切りができる
ノコギリ用ガイドブロックをつかえば、かなりの精度で垂直切りができる

直線、かつ垂直に切ることができます!

なお材料と治具と作業台をしっかりクランプすることがとても大切なのですが、都合の良い作業台がない場合もあります。そういう場合は私と同じように、食卓の上でクランプできるようにするための小型作業台を作ってみてください。こちらの記事で詳しく紹介しています。

ガイドブロックの応用例

さらに応用として、ガイドブロックを二つ使うと正確な溝(みぞ)加工もできるようになります。

まず一つのガイドブロックを、スコヤで直角を取りつつ両面テープで材料に貼り付け、

ガイドブロックを一つ、両面テープで貼り
ガイドブロックを一つ、両面テープで貼り

それと向かい合わせになるようにもう一つのガイドブロックを両面テープで貼ります。このとき任意の木材を間に挟んで幅を調整すると、あとでその木材を溝にはめ込めるようになります。

部品を挟み込んでもうひとつのガイドブロックを貼り
部品を挟み込んでもうひとつのガイドブロックを貼り

間に挟まっている部品を取り除いて、二つのブロックの間を深さストッパー付きノコギリで切り込めば、

二つのガイドブロックの間を、ノコギリで切り込む(深さストッパー付き)
二つのガイドブロックの間を、ノコギリで切り込む(深さストッパー付き)

こんな溝を掘ることもできてしまいます!

現物合わせで正確な幅の溝を掘ることも可能
現物合わせで正確な幅の溝を掘ることも可能
はろ子

深さストッパーってなに?

ノコギリの刃に両面テープで貼り付けた薄い板のこと。それ以上深く切り込まないためのストッパーになるんだ。アイスの棒を貼るだけでもOK

さくや

ちなみに上の写真は、細い角材を両面テープで貼り合わせた状態でまとめて溝加工をしたものなのですが、貼り合わせたものをバラして組み合わせると

正確な溝で相欠き継ぎが可能
正確な溝で相欠き継ぎが可能

こんなに美しい相欠き継ぎ(あいかきつぎ)になってしまいました!相欠き継ぎについては、こちらの記事で詳しく説明していますので興味がある方は後で読んでみてください。

はろ子

でもこれだと、直角を出すにはいちいちスコヤが必要になるよね?ちょっと面倒・・

そこで必要になるのが、次に紹介するノコギリ用直角ガイドだ

さくや

《中級者向け》ノコギリ用直角ガイド

先ほどのガイドブロックはとても便利なものですが、ガイドブロックだけでは直角に切ることができないという不便さがあります。

その弱点を補うために、ガイドブロックをさらに発展させたのがノコギリ用直角ガイドです。

ノコギリ用直角ガイド
ノコギリ用直角ガイド

直角ガイドの詳しいことは杉田豊久氏の著書『超画期的 木工テクニック集』で紹介されています。直角ガイドをはじめ、治具を使ったノコギリ木工の基礎について詳しく記載されています。

この記事では、書籍で紹介されている直角ガイドを参考に私なりの工夫を加えた直角ガイドを紹介します。

これが一つあるだけでほぼすべての木材を正確に直角に切ることができるようになります。本格的な木工をしようと思ったら、まず最初に必要となる治具なのでぜひ作ってみてください。

ノコギリ用直角ガイドの作り方

ノコギリ用直角ガイド
ノコギリ用直角ガイド

ノコギリ用直角ガイドは、ある程度の幅の板材(ベース板)に、直角フェンスを接着して作ります。板材の端にマグネットシートを貼り付けてノコギリ用の治具としています。

ノコギリ用直角ガイドの材料

ノコギリ用直角ガイドの材料は、ベース板一枚とフェンス板一枚です。

ノコギリ用直角ガイドに必要な材料
ノコギリ用直角ガイドに必要な材料

大きな板がベース板、その上に載っている茶色い板がフェンス板です。

一見単純な材料なのですが、精度を上げるために重要なポイントがありますので詳しく説明していきます。

ベース板のポイント

ベース板は、材料は何でも構いません。

ただし捻じれたり反ったりすると精度が下がりますので、そのリスクを避けるのであれば集成材がおすすめです。今回は 250 x 150 x 24mm のパイン集成材を使用しました。

ベース板の端(木端面)にマグネットシートを貼ることになるので、ベース板の厚さは24mm以上は欲しいところです。厚さが大きいほうがノコギリでカットする際の垂直精度が向上します(ただしノコギリを引くのが重くなります)。

さくや

もし厚手の板が手に入りにくい場合は、12~15mm程度の板を2枚貼り合わせてもOK。ただし木端面が面一になるようにしてね

注意

厚さがあって平面精度があるということで、ホームセンターで販売されているランバーコア合板でも作ることができますが、心材がスカスカで木端面にマグネットシートが付きにくいのが難点です

そしてマグネットシートを貼り付ける木端面は必ず直線・垂直である必要があります。ホームセンターで材料を買う際には、端が直線・垂直になっているものを選ぶようにしてください。

ベース板の木端面は垂直にカットされていること
ベース板の木端面は垂直にカットされていること
ベース板の木端面は直線であること
ベース板の木端面は直線であること
はろ子

板の上に載っている銀色の棒はなに?

短いアルミフレーム。値段の割に直線精度が高いから、私は定規代わりに使ってるよ。さしがねとかで代用してもOK

さくや

フェンス板のポイント

フェンス板は、幅30㎜、厚さ5㎜くらいの工作材がおすすめです。長さはベース板の幅以上(今回の場合は150mm以上)あれば大丈夫です。

反り、曲がり、ねじれがなく、木端面が直線のものを選んでください。

フェンス板は木端面が直線のものを用意する
フェンス板は木端面が直線のものを用意する

注意

ホームセンターで販売されている工作材は曲がっていることが多いので注意してください。長くて曲がっている材料でも、その中で比較的まっすぐな部分を150㎜程度切り出すことができればOKです。

フェンス板の幅は10㎜程度でも大丈夫なのですが、

ノコギリ用直角ガイドの作り方

ノコギリ用直角ガイドの作り方は簡単です。

まず、ベース板の木端面にマグネットシート(100均)を貼り付けます。

ベース板とマグネットシート
ベース板とマグネットシート

マグネットシートは大きめのものを用意して貼り付けてから、周りをカッターで切り落すときれいに仕上がります。

マグネットシートは大きめのものを貼り付けるのが良い
マグネットシートは大きめのものを貼り付けるのが良い
余分なマグネットシートを切り落とせばOK
余分なマグネットシートを切り落とせばOK

マグネットシートを貼り終えたら、フェンス板を接着します。

さくや

ここが一番重要!!

フェンス板接着の際は、スコヤをベース板の端(短辺)から50㎜程度離れた位置にあてがってフェンス板がマグネットシートに対して直角になるように接着します。

フェンス板をマグネットシート面に対して直角に接着
フェンス板をマグネットシート面に対して直角に接着

ポイント

あとで詳しく説明しますが、ベース板の端からどれだけ離して接着するかが直角精度に影響します。

フェンス板はマグネットシートよりも少しはみ出るように接着します。はみ出た部分を後で切り落として面一(つらいち)にするためです。

さくや

接着中にフェンス板が動くこともあるから、完全に固まるまでは時々様子を見たほうがいいよ

ここはビスとか釘とか使わないの?

はろ子
さくや

お勧めしない。ビスとか釘を打つ時に木目の影響で僅かに横ズレすることがあるから

十分に時間をおいて接着剤が固まったら、フェンス板のはみ出した部分を切り落とします。

全体をひっくり返して作業台にクランプし、マグネットシートにノコギリの刃を当ててそのまま切り落とします。

余分なフェンス板を切り落とす
余分なフェンス板を切り落とす

なお、この時はアサリ無しノコギリを使うのがベストです。

無ければ普通のノコギリでも構いませんが、マグネットシートをノコギリの刃で傷つけないように注意してください。

これでノコギリ用直角ガイドの完成です!

ノコギリ用直角ガイドの使い方

ノコギリ用直角ガイドは、材料と一緒にクランプして使います。

ノコギリ用直角ガイドと材料を一緒にクランプ
ノコギリ用直角ガイドと材料を一緒にクランプ

材料に直角ガイドを乗せるとき、裏面のフェンスが材料にぴったり当たるようにしてください。

裏面のフェンス板を材料の端にぴったり当てる
裏面のフェンス板を材料の端にぴったり当てる

フェンスが材料にぴったり当たっていれば、マグネットシート面が正確な直角・垂直・直線になっています。

この状態でマグネットシートにノコギリの刃を貼り付けて、そのままゆっくり切っていきます。

直角ガイドにノコギリを貼り付けて切り下ろす
直角ガイドにノコギリを貼り付けて切り下ろす

このとき、ノコギリの刃がマグネットシートから離れないようにしてください。

特に手前部分が左右にブレやすいので要注意です。

ポイント

実際に切ってみるとわかりますが、先端は正確に直角に切れるものの、手元に近いほど誤差が出やすいことに気が付きます。フェンスの接着位置を奥に50㎜ほどずらしているのは、この手元の左右ブレを避けるためです。

この直角ガイドで切ったときの結果はこんな感じです。

直角ガイドで切ったときの直角精度
直角ガイドで切ったときの直角精度

水平方向の直角精度はとても高く、ノコギリ加工の精度としては上限レベルと言ってよいでしょう。

垂直方向の精度もかなり良いのですが、下の写真のように若干の誤差が出ることはあります。

直角ガイドで切ったときの垂直精度
直角ガイドで切ったときの垂直精度
はろ子

え・・?上の写真で誤差があるの??

よく見ると左の端に隙間があるんだ。完全な垂直とは‥言えないかな。もちろん、そこまで気にしない場合は問題ないよ

さくや

ポイント

垂直方向で誤差が出てしまうのは、ノコギリの刃幅に対してマグネットシートの幅が狭いことが原因です。ベース板を厚くして、マグネットシートの幅を40㎜以上にすればさらに精度が上がります。(ただし、ノコギリを引くのがとても重くなります!)

《上級者向け》ノコギリ用直角ガイド【角度調整式】

さて、ここまで来たらあとはこだわりの領域です。

先ほど作成した直角ガイドは、実際に切ったときに出るわずかな誤差、ベース板やフェンス板が変形したときに出てしまう誤差・・などを解消することができません。

そこでさらに改良を加えたのがこちらです。

直角ガイド(角度調整式)
直角ガイド(角度調整式)

改良点は下記3点です。いずれもこだわりの領域なので、必要性を感じないのであればここまでしなくても大丈夫です。

  • ベース板を厚くして36mmとした ⇒垂直方向の直角精度を改善
  • フェンス板をアルミ板に変更 ⇒フェンス板の変形による誤差を避ける
  • フェンス板をボルト&ナット(ベース板に埋め込んである)で固定 ⇒直角の角度を微調整可能に
さくや

ここで改良したことは、私自身がこういう問題に直面したことがあるって意味でもある

問題ないのなら、ここまでやらなくてもいいってことね

はろ子

詳しい作り方は割愛しますが、留め切りの記事のほうでよく似た治具を作成しているので、そちらを参考にしてみてください。

もうこれさえあれば直角で困ることはありません。自信をもって、ノコギリでの直角加工ができるようになるはずです!

まとめ

正確な直角カットが高精度な木工の第一歩
正確な直角カットが高精度な木工の第一歩

DIYを始めたばかりの初心者はもちろん、ある程度経験がある方にとっても木材を直角に切ることは難しいことです。

しかしどんな木工であっても、木材を直角に切るところから始まります。直角に切れることが木工の大前提なのです。

何年も練習をすればできるようになると言いますが、私たちDIYerは何年も練習するというわけにはいかないので、合理的に解決するための方法が今回紹介した『治具』ということになります。

治具はとても便利なものですが、治具の精度にも限界があります。それは悪い意味だけではなく、作り方によって精度をコントロールできるということでもあります。

私の経験から言うと、

  • 治具の精度は、治具を作る際の材料の精度をそのまま反映する
  • 治具が大きければ、精度が上がる代わりに扱いにくくなる
  • 治具が小さければ、扱いやすい代わりに精度が下がる
  • 治具においては大は小を兼ねない

と言えます。

どの程度の精度を出すかは治具を作る自分次第で、その気になればどこまでも精度を追求できるということです。

今回紹介した治具は初心者にも作りやすく使いやすい治具でしたが、これをきっかけにして、ぜひ治具を作る楽しみと奥深さを知ってもらえれば幸いです。

直角に慣れてきたら、次は留め切りにもチャレンジしてみると面白いと思います。治具の難易度は上がりますが、治具さえ作れば簡単に留め切りができるようになります。よろしければこちらの記事も読んでみてください。

参考書籍

ノコギリ用の治具に興味が出てきたら、ぜひ杉田豊久氏の著書を読んでみてください。様々な治具の作り方と使い方について詳しく解説されています。

超画期的木工テクニック集

杉田豊久氏の著書の一冊目で、直角ガイド、留め切りガイドなどノコギリ用治具のほか、留め継ぎ、包み継ぎ、相欠き継ぎ、追い入れ継ぎなど、治具を使った加工方法を詳しく解説しています。

2013年当時の治具について記載されているため、さまざまな改良がされた現在の治具と比べると旧式と言える記載があります。しかしノコギリと治具を駆使する『杉田式ノコギリ木工』の原点であり、この内容が以降の書籍の前提知識となっていくため必読となる一冊です。

杉田式ノコギリ木工のすべて

2015年に出版された『杉田式ノコギリ木工』関連書籍の2冊目。『超画期的木工テクニック集』の続編という位置づけになっています。

新型縦挽きガイド、ベンチフック、大留め削り台、平留め削り台の紹介と、蟻継ぎ用の治具関する詳しい説明があるほか、巻末には本格的なワークベンチの作り方に関する解説もあり、(いつか作りたいなぁと夢見ながら)読むだけでもとても楽しめる内容になっています。

木組みの完全テクニック

2021年に出版された『杉田式ノコギリ木工』関連書籍の3冊目であり、これまでの集大成ともいえる一冊。驚くことに、海外でも英訳されて販売されています。

縦挽きガイド、直角ガイド、留め切りガイドなど、杉田式ノコギリ木工で駆使する治具はすべて解説されているため、三部作のうち一冊だけを買うのであれば『木組みの完全テクニック』を選ぶのがベスト。

ただし前述の2冊と比べると難易度の高い内容となっているため、これから木工を始めようという方にはハードルが高いと感じます。ノコギリに慣れていない方は、前述の2冊のほうをお勧めします。

ポイント

もしわからないことがあれば、気軽に私にご相談ください。この記事のコメント欄でも、X(Twitter)でも大丈夫です!

  • この記事を書いた人

さくや

DIYと木工と刃物研ぎとキャンプが趣味のシステムエンジニア。賃貸住宅のリビングでもできる『静かなDIY』をテーマにブログを運営しています。