さくや(@sakuyakonoha77)です。
DIYや木工をしていると、ぜひ作ってみたくなるのが額縁やフォトフレームですよね。
そのとき必ず直面するのが45度切り・・
いわゆる
留め切り(とめぎり)
です。
留め切りはとても難しいものです。市販のノコギリガイドで切ったとしても、うまくいくとは限りません。
そこで今回は、ノコギリで木材を正確に45度で加工する方法について紹介します。
角度を微調整できる治具なので、試し切り&微調整を繰り返せば確実に完璧な留め切りができるようになります。
ぜひチャレンジしてみてください!
留め切りとは
留め切りとは、一般的に木材を45度で切ることを指す言葉です。
そして留め切りした木材を貼り合わせてつなぐことを留め継ぎ(とめつぎ)といいます。

留め継ぎは額縁などでよく見かけます。
それこそ100円の額縁でさえ留め継ぎになっている時代なので、とても安価で一般的な継ぎ方と言うことができます。しかし

なんであれが100円で作れるんだ・・
と嘆きたくなるくらい、実は留め切りは難しいものです。機械加工するならばともかく、ノコギリで加工するのは至難の業と言ってもいいくらいです。
それを解決するための治具をこれから紹介していくわけですが、まずは留め切りの何が難しいのかを改めて整理してみます。
留め切りの難しさ
難所1 直線で切らなければならない
まず、留め切りした材料は二つ合わせて留め継ぎにすることが多いです。
そのため当然ですが、断面はまっすぐでなければなりません。

そしてそもそも、フリーハンドのノコギリでは木材をまっすぐに切ることがとても難しいのです。
難所2 垂直に切らなければならない
留め切りというと45度にばかり意識を向けがちですが、その断面が木表・木裏に対して垂直であることも重要です。

断面が傾いていると、留め切りした材料をしっかり接着することができません。ただでさえ強度の弱い留め継ぎが、さらに弱くなってしまいます。
木材の直角切りの難しさ、そして直角に切るための治具については別記事で詳しく説明していますので、興味があればぜひ読んでみてください。
難所3 材料を同じ長さに切り揃えなければならない
そして難しさの3つ目。
あまり意識されることがないのですが、フレームを作る場合は向かい合う辺の材料の長さを正確に同じにするというのが重要なポイントです。


これが盲点になることすごく多い。色々調整してもうまくいかない場合、これが原因だったりする
これを解決するためには『長さストッパー』という治具が必要です。下の写真で、左側にクランプしているL字型の治具がそれです。

この治具については杉田豊久氏の著書『徹底図解 手工具とジグで実現する 木組みの完全テクニック』で紹介されていますので、そちらを参照してみてください。

ちなみに、上の写真で使っている長さストッパーは私のオリジナル。書籍で紹介されているものはちょっと違うよ
難所4 45度に切らなければならない(しかも8か所!)
そして最後に来るのが、角を45度に切らなければならないという難しさです。


最初にそれが来ると思ってたのに‥
留め切りで45度ってのは、誰でも思いつくんだ。でも、留め切りの失敗はそれ以外が原因になることも多いんだ

これはわずかな誤差も許されないため、正確に45度である必要があります。
そして極めつけは、留め継ぎの額縁の場合、45度切りを8回も成功させなければならないということです・・!
.jpg)
留め継ぎの額縁の場合、留め切りに誤差があればすべての角で誤差が出るため、誤差が8倍に増幅されてしまうということでもあります。

無理ゲーすぎない?
そうだね、すごく難しい。正確な45度加工を繰り返すためには、治具が絶対に必須だってことだ

理想の留め切りガイドとは
さて、私はいろいろ考えました。どうすれば、手道具で正確な留め切りを実現できるのか。

まず、最初から『正確な45度』にするのは無理だと思ったんだ。どんな治具を作ったって、作ったのが自分である限り、それが正確かどうかわからないんだから
それで、どうするの?


発想を変えればいい。誤差は必ず出る。その誤差を、小さくしていくことを考えればいい
つまり誤差の無い加工を目指すのではなく、どうすれば誤差を修正できるのか?と考えたほうが建設的ということです。
そんなことを色々考えた結果・・・こういう結論に至りました。
角度調整可能な治具こそが正義!!
というわけで、角度調整式のノコギリ用留め切りガイドについて紹介していきたいと思います。
ノコギリ用留め切りガイド《角度調整式》

こちらがノコギリ用の留め切りガイド《角度調整式》です。ベース板となる木材にマグネットシートが貼ってあり、アルミフェンスをボルトで固定している点が特徴です。
ボルトを緩めればアルミフェンスを動かすことができるため、角度の微調整が可能です。また、角度が確定したらボルトをしっかり締めることで確実に固定することができます。
上の写真では見えませんが、反対側にも同様のアルミフェンスが取り付けてあるため裏表両面使うことができます。

裏表両面使えて・・なんかいいことあるの?
いいことというよりも、両面が必ず必要になるといった方がいいね。片面だけでは意味がないんだよ

なお、この治具は杉田豊久氏の著書『超画期的木工テクニック集』で紹介されている「平留め切りガイド」をベースに、角度を調整できるように私が改良したオリジナルです。
留め切りガイドの使い方

留め切りガイドは、このように材料にあててクランプして使います。
裏面のフェンス(写真には写っていない)を木材の端に押し当てることで、マグネットシート面が木材に対して45度の傾きに固定されます。
留め切りガイドと材料を固定したら、あとはマグネットシートにノコギリの刃を貼り付けて、そのまま前後に動かすだけで留め切りができます。

ノコギリがマグネットシートから離れないように、力を抜いて挽くのがコツです。
切り落とした部品を留めスコヤに当ててみると、正確な留め切りになっていることがわかります。

ただしこれでも、目視ではわからないレベルの誤差が出ることがあります。額縁を作っている場合は、4辺の材料を組み合わせた時に誤差がはっきりと出てきます。
その誤差が留め切りの角度の問題である場合は、角度が45度よりも小さいのか・大きいのかを考えて、アルミフェンスの角度を微調整します。
誤差が出たら微調整、もう一度試して誤差が出たら微調整・・を繰り返すことで、必ず正確な留め切りに辿り着くことができます。

うわ~、なんか気の長い話に聞こえる・・
そうでもないよ。何回か試し切りして微調整するだけで、絶対確実な留め切りができるようになるんだ。むしろ近道じゃないかな

留め切りガイドの作り方
それでは、留め切りガイドの作り方を紹介していきます。
ベース板に使用する木材について
今回作成する治具は精度が重要なので、ベース板に使う木材は歪みや反りのない集成材・MDF板がおすすめです。
また、木端面がノコギリのガイドになるため、ある程度厚みが必要です。できれば24㎜以上の板材がおすすめです。厚さのある材料が手に入らない場合は、15㎜の板を2枚貼り合わせて30㎜にするといった方法でも問題ありません。
必要な木材の大きさは木取りの仕方によって変わってきます。木取りの仕方がとても重要なポイントなので、詳しく説明します。
留め切りガイドの精度と木取りの仕方について
今回作成する留め切りガイドは、木端面にマグネットシートを貼り、それをガイドとしてノコギリを動かすことになります。図で表すと下の図のとおりです。

上の図で示した赤点線部分にマグネットシートを貼るわけですが、ここが歪んでいるとノコギリの刃の動きも歪んでしまいます。そのため、使用する木材の木端面の垂直・直線が極めて重要なのです。
自分でカットして垂直・直線を出せるならよいのですが、初心者にとってはそれも難しい話。そこで、木端面で垂直・直線が出ている材料を探して買ってくるのが一番確実ということになります。
ホームセンターで木材を探すときに木端面が垂直・直線にカットされているものを探してみてください。もともとカットされている製品であれば垂直・直線が出ているものが多いので、それほど難しくないはずです。
そして市販の木材の木端を利用して留め切りガイドを作る場合、ベース板の木取りは下の図のようにする必要があります。

垂直・直線になっている木端面が、留め切りガイドの斜辺になるように切り出すことになります。不要部分の切り落としは精度がいらないので、自分でカットしても大丈夫です。
この切り出し方をする場合、もとの木材の大きさは300 x 200㎜程度あれば十分です。大きさは任意なので手に入る材料に合わせて切り出してみてください。
なお、上の図のような切り出し方をせず、長方形の材料からワンカットで切り出す方法もあります。

ただしこの場合、一番重要な斜辺部分を自分で加工しなければならないため難易度が格段に高くなります。
鉋、定規(直線の基準)、スコヤを使って垂直・直線を完璧に出すことが必須条件です。自分の道具と腕に自信がある場合のみチャレンジしてみてください。

まぁ、私はその斜辺カット方式のハードモードで進めたんだけどね・・
なんでわざわざ難しい方法を・・


私はホームセンター端材売り場の木っ端で作ったからなぁ。直線と垂直を出すために鉋を駆使する羽目になった。たいへんだった
安上がりに済ませようとすると苦労するってことね

斜辺が垂直・直線になっている木材が手に入ってしまえば、最難関はクリアしたようなものです。
あとは他の部品を作って組み立てるだけ。ここから先は(一番最後以外は)精度に影響しないので、気楽に進めて大丈夫です。
フェンスの作成
木材に押し当てることになるフェンスは、幅が広く薄い木材か、アルミ板がおすすめです。

木材はわずかに曲がっていることがあるため、今回はアルミ板(2 x 25 x 1000mm)を使いました。ただしアルミ板は加工が大変なので、無理せずに木材を使っても大丈夫です。
このフェンス板を長さ200㎜程度で切り出して、一方の端を45度で切り落とします。ここでの45度加工は精度に全く関係ないので、多少ズレても問題ありません。
.jpg)

ちなみにここで使っている金鋸はバーコというメーカーのものです。バーコのソーフレームに、ホームセンターの金鋸替刃(SK11)をセットして使っています。
この金鋸は剛性、安定性、刃のテンションが抜群で扱いやすく、アルミ板はもちろんボルトなども簡単に切ることができるのでお勧めです。金鋸は使いにくい・・と感じている方は使ってみてください。
フェンスを切り出したら、下の写真のようにボルト穴の位置をフェンスの2か所に目印を引きます。

同様に裏面用のフェンスをもう1枚、あわせて2枚のフェンス板を用意します。
フェンス板とベース板をまとめて下穴加工
2枚のフェンス板を用意したら、ベース板の裏表両側に、両面テープでフェンス板を貼り付けます。

この両面テープは仮止めで、あとですぐにはがすので、100均で販売されている『はがせるタイプ』の両面テープを使うのがおすすめです。
フェンスを貼り付けるとき、上の写真のように留めスコヤをつかってベース板斜辺とフェンス上辺が45度になるようにしてください。
そして裏面のフェンス板も、表面のフェンス板と同じ位置に来るように貼り付けておきます。
貼り合わせたら、電動ドリルで下穴をあけます。ドリルビットは2㎜程度の太さのものを使い、フェンス板に記してある3つの印のうちの中央の印の位置に下穴をあけます。裏面のフェンス板を含めて3枚まとめて穴をあけるので、貫通穴になります。


わぁ、なんか見たことない道具が出てきた!
まだ紹介していない秘密兵器。自作のドリルスタンドだよ。いつか機会があったら紹介するね


こういう道具を使わなきゃいけないの?
そんなことはないよ。正確に垂直な穴あけが理想だけど、神経質にならなくても大丈夫

下穴を貫通させたら、ベース板からフェンスをはがします。木材のフェンスの場合は、折れたり曲がったりしないように注意してください。

フェンスは縦長の穴をあける
フェンスをはがしたら、今度はフェンスだけに追加の穴をあけます。
さきほど墨付けした3つの印のうち、上下に離れた二つの印の位置に太さ8㎜の穴をあけます。上下の穴は中央でつながる形になります。上下の穴が近すぎて加工しにくい場合は、もうすこし離れた位置に穴をあけても構いません。

上下に穴をあけたら中央のくびれ部分をヤスリで削って長穴にしておきます。バリがあればあわせてとっておきます。

ベース板にオニメナットを埋め込む
ベース板のほうは、先ほど開けた下穴の位置にオニメナット用の下穴をあけます。
今回使用するM6オニメナット(Eタイプ)の場合、適正下穴は8.7~9.0mmです。
.jpg)
でも私は9mmの木工用ドリルビットを持っていないので・・いつも8mm木工ドリルビットの下穴で済ませています。

下穴をあけたら、オニメナットを埋め込みます。30㎜の厚さの木材に25㎜を埋め込むので、ちょうど真ん中ぐらいに埋め込まれるようにします。

ベース板にマグネットシートを貼り付ける
オニメナットをねじ込んだら、ベース板の斜辺部分にマグネットシートを貼ります。マグネットシートは100均で売っているもので問題ありません。
マグネットシートは少し大きめに切ったものを貼り付けて、はみ出した部分をカッターで切り落とすのが簡単です。
を貼り付ける.jpg)

なお、この作業はフェンス取り付けの前に行うことが重要です。マグネットシートを貼った後の、マグネットシート面がこの治具の基準面になるからです。
フェンスを取り付ける
ここまで来たら、あとは仕上げです。
フェンスを取り付けるボルトとワッシャーを用意します。

六角ボルトは長さが重要です。厚さ30mmのベース板の両面から差し込むため、長さが15㎜より長いと板の中央でぶつかってしまいます。必ず板厚の半分以下の長さのボルトを使います。
また、ワッシャーは少し大きめのほうが使いやすいです。ワッシャーが小さいと、フェンス板にあけた穴に落ちてしまうことがあるからです。今回はフェンス板の幅が25㎜なので、直径20㎜のワッシャーを使いました。
それでは、フェンス板をベース板に取り付けていきます。
以前両面テープでフェンスを貼り付けた時と同様に、留めスコヤをあてがってフェンス板の位置を決めて、ボルトとワッシャーでしっかりと締めていきます。

裏面も同様に、フェンス板を取り付けます。ボルトがうまくはまらないときは、裏面と表面のフェンスが逆の場合があります。入れ替えて試してみてください。

フェンス取付の際は、マグネットシート面とフェンス上辺が正確に45度になるように、留めスコヤにピッタリ合わせた状態で固定してください。
留め切りガイドの完成!&角度調整方法

これで留め切りガイドの完成です。お疲れさまでした!
この留め切りガイドを使って額縁を作ると、最初は誤差が出てくることが多いです。目視ではわからないレベルであっても、実際に額縁を作ってみると誤差として見えてくるものです。
これはもう仕方のないことで、誤差がない治具を作るよりも、誤差のある治具を微調整して精度を上げる方が建設的です。そのための角度調整式でしたよね。
というわけで、実際に使ってみて誤差を感じるときはフェンス板の角度を調整することになります。

角度を調整するときは、フェンスのボルトを少し緩めて、わずかにフェンスを動かしたら再度ボルトを締めます。
このとき、ボルトを緩めすぎないことが重要です。ユルユルに緩めてしまうと大幅に動いてしまって微調整になりません。簡単には動かない程度にボルトを緩め、慎重に、わずかに傾きを変えて締めなおすようにします。
角度を調整したら、再度試し切りしてテストをします。もはや目視ではわからないレベルの調整になってくるので、何度もフレームを作ってみて確認することになります。

辛抱強く調整すれば、かならず完璧な角度の留め切りガイドを作ることができます。ぜひ頑張ってみてください。
この治具を使えば、こういった額縁を簡単に作ることができるようになります。

この額縁の留め継ぎは、ノコギリ加工一発で作っています。微調整はしていません。
今回紹介した留め切りガイドを使えば、これくらいのものは作れるようになります。ぜひチャレンジしてみてください!
さらに上を目指すなら
ノコギリ加工で完璧な留め切りは実現できますが、場合によっては鉋で留め加工をしたいという場合もあります。そういう場合は別の治具が必要になりますので、興味がある方はこちらも読んでみてください。
鉋を使ったことがない初心者のための記事も用意しています。せひ、あわせて読んでみてください。
-
替え刃式鉋(かんな)はDIY初心者におすすめ!面取りの方法など、詳しい使い方を紹介します
続きを見る
-
西洋鉋は初心者にもおすすめ! ~購入方法、使い方、メンテナンス方法について
続きを見る
おまけ

さっきの額縁の写真。なにも違和感はなかったと思うけど、実は裏が凄いんだよ
ん?なにがあったの?


この写真を見てみて
-1024x768.jpg)

えっ、なにこれ。留め継ぎ・・じゃない!?


そう。留め継ぎは強度が低い・・って最初に説明したよね。これはその強度を改善した『留め型相欠き継ぎ・裏溝付き』という加工なんだ


おぉ~、なんかすごいことになってる


これも、ノコギリと治具だけで加工したんだ。ノコギリってすごいよね
この作り方も説明してくれるの?


説明するには余白が少なすぎるので、また別の機会にね~
(調子に乗って、自分の首絞めていることに気が付かないのね、この人は)

というわけで、治具とノコギリで留め切りができるようになると、工夫次第で様々なことができるようになります。
またいつか、別記事で詳しく説明したいと思いますのでお楽しみに!