さくや(@sakuyakonoha77)です。
ちょっと腰掛けたいとき、軽くて持ち運びやすい椅子があると便利です。子供がいる家庭の場合は子供用にも欲しいですよね。
しかし椅子を買うのもなかなかお金がかかるもの。買ってしまった椅子は、捨てるときにもお金がかかるのが気になります。
そんな方にぜひお勧めなのが、ホームセンターで必ず販売されている『杉の貫板』で作ることができる木製スツールです。素朴で、それでいて洗練されたデザインはどんな場所にも似合います。
難易度は低いので木工入門にもおすすめです。はじめての方でも安心して読んでみてください。
【難易度】 初級者向け
【予算】299円(+税)※2020年当時の価格です。
【主な材料】
- 杉板 13mm x 90mm x 3650mm
※3650mmが無ければ1820mm x2本でも可 - ビス(コーススレッド 25mmなど)
- 塗料(お好みで)
【主な道具】
- 電動ドリルドライバー(インパクトドライバーでも可)
- ノコギリ
- 鑿(無ければマイナスドライバー)&金づち
- 自由スコヤ
- 作業台&クランプ
今回参考にした書籍
今回は私のオリジナル作品ではなく、こちらの書籍を参考にしました。
こちらの書籍では、1953年に発行された『アイディアを生かした家庭の工作』という雑誌をもとに、木製家具24点をピックアップして紹介しています。
家庭向けに紹介されただけあってとても簡単なDIYが多いのが特徴ですが、それでいて杉で作る家具はチープさを感じさせません。
また、杉板はホームセンターで安く手に入れることができるので、材料費を抑えてDIYを楽しむことができます。
今回紹介するスツール以外にも、椅子やベンチ、テーブル、収納など多くの家具が紹介されています。
スツールの設計図
杉板で作成するスツールの設計図はこちらです。※各部品の詳細は後で説明します
今回作成するのは四組の脚で自立するスツールです。
分かりやすいように部品ごとに色分けしました。
- 座板(ざいた)・・・茶色
- 脚(あし)・・・黄色
- 貫(ぬき)・・・オレンジ色
スツールの脚は杉板二枚で一組となっており、計四組あります。それぞれの脚で横向きの貫を挟んでいるのが特徴です。
貫は相欠き継ぎで組んでいるため、横向きに引っ張っても壊れることはありません。
二枚一組の脚は先端をしならせて貼り合わせて仕上げます(設計図では割愛)。こうすることで貫をしっかり挟んで固定しつつ、脚が歪んで壊れるのを防ぎます。
スツールの材料の準備
材料は杉の貫板1枚のみ
今回使う材料はとてもシンプルです。
なんと『杉 貫板(ぬきいた) 3650mm』1枚のみ!
材料費はおどろきの299円!(+税 ※2020年当時の価格です)
端材で済ませるDIYを除けば、過去最安値なのは間違いなしです。
杉の貫板は色味(赤身、白身)や木目、節、表面加工の粗さがまちまちなので、購入の際は好みに合う板を選ぶようにしましょう。
なお3650mmの杉貫板が手に入らな場合は1820mmの貫板二枚で代用してください。
材料の木取り
まず3650mmの杉貫板から以下の部品を切り出します。この後で細かく加工していきますので、ここではおおざっぱに木取りします。
- 500mm x 90mm 4枚 …★
- 320mm x 90mm 1枚 …★
- 270mm x 90mm 1枚 …★
- 270mm x 90mm 3枚
次に★マークの付いた板を縦半分にカットします。
ホームセンターでカットをお願いすると『多少誤差が出ますが大丈夫ですか?』と訊かれますが、なにも問題ありませんので『大丈夫です!』と答えてあげてください。
結果的に以下の材料が揃うはずです。不足が無いことを確認しましょう。
- 500mm x 43mm 8枚
- 320mm x 43mm 2枚
- 270mm x 43mm 2枚
- 90mm x 270mm 3枚
43mm幅となっているものは、90mmの杉板を縦半分にカットしたものです。
カット時のロスで1~2mmほど小さくなるので、ここでは43mmとしておきました。
各部品の加工
スツールの脚の加工
43mm x 500mmの材料はスツールの脚になります。脚はわずかに傾けますので、任意の角度でカットします。今回の設計では傾きを5度としておきました。
ここで決めた角度は最後まで使うので、途中で変えないように注意する必要があります。
今回のように任意の角度を最後まで使い続ける場合は『自由スコヤ』がとても便利です。
自由スコヤに目盛りはありません。角度を自由に設定したり、他の角度を写し取るときに使います。今回は角度の数字にこだわらず好みの傾きを探してみてください。
自由スコヤで傾きを決めたら中央のネジをしっかり締めて動かないようにします。
脚の木材の端に自由スコヤで墨付けをしたら、その470mm離れた位置で同様に墨付けをします。こうすることで底辺の長さが470mmの平行四辺形に墨付けすることができます。
他7つの木材も同様に墨付け・・するのが正攻法ではありますが、かなり面倒ですよね?
今回はそれほどの精度は要らないので、効率的に墨付けしてみます。八つの部品があるので、四つずつまとめて墨付けしてみましょう。
まずひとつの部品に自由スコヤで墨付けしたら、他三つの部品を重ねて揃えます。そしてさしがねを使って四つまとめて木端面(側面)の墨付けをしてしまいます。
このようにして手前と奥、左右合わせて計四か所の木端面(側面)に垂直の線を引きます。これで墨付け完了です!
墨付けが終わったら、そのままクランプして4本まとめてノコギリでカットします。
ここで使っているノコギリは『ゼットソー265』です。どのような向きでも切ることができて切れ味がとても長続きするのが特徴です。
ただし杉板はとてもやわらかいので、力任せに引くと断面が割れたりすることがあります。力を抜いて少しずつ切り進むようにしましょう。
なお設計図では省略していますが、脚の先端(床に接する方)は角を取っておくと床を傷つけにくくなります。お好みで加工してみてください。
あとは軽く面取りして、サンドペーパーで仕上げれば脚の加工は完了です。
スツールの貫の加工
椅子の中央で交差する横向きの部品を『貫(ぬき)』と呼びます。今回のスツールでは大小二つの貫を使います。
貫は椅子の構造を支える重要な部品なので、相欠き継ぎで交差させることで強度を上げます。
と言っても、それほど難しいことはありません。
まずは自由スコヤを使って脚と同様に計四本の両端に墨付けします。脚と違って貫は台形になりますので向きに注意です。
両端をノコギリでカットしたら、その中央に切り欠きの墨付けをします。具体的な位置は上の設計図を参考にしてみてください。
墨付けをしたら、まずはノコギリで縦の切り込みを入れます。
相欠き継ぎは切り欠きが大きすぎるとユルユルになって失敗します。そのため、墨線を残すように線の内側にノコギリを入れるのがポイントです。
なお、こういう細かい加工をするときは直角切り治具を使うと安心です。
ノコギリで木材を直角に切る方法 ~高精度なノコギリガイドの作り方
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切り込みを入れたら鑿で欠き取ります。こちらは相欠き継ぎが深く組み合わさるように、墨線よりわずかに深めに欠き取るのがコツです。
あとは、軽く面取りしてサンディングをすれば貫の加工はおしまいです。
スツールの座板の加工
座板の加工はとても簡単です。
最初に木取りした板そのままでも問題はありませんが、角が当たると痛いので丸めておくといいですね。
まずはコップなどを使って角に丸く墨付けをします。
次に、ノコギリで大まかに角を切り落とします。
ノコギリでは難しい丸め加工は、ノコヤスリを使うと簡単です。
あとは面取りとサンディングをすれば貫の加工は完了です。
スツールの組み立て
部品が揃ったら、いよいよ組み立てです。
貫の相欠き継ぎ
大小それぞれの貫を相欠き継ぎで組み合わせます。
組み合わせるための溝は若干きつめにしてあるため、そのままでは入りにくい状態です。これを入りやすくするために木殺しをします。
上の写真で斜線を引いてある部分を金づち(玄能)の凸面を使って叩いて凹ませます。これを木殺しと呼びます。
この状態で貫を組み合わせ、当て木(適当な端材)の上から金づちで叩いて組み合わせます。組み合わせた後で凹ませた木材が復元するため、相欠き継ぎがしっかりと固定されます。
このようにして、大小それぞれの貫を相欠き継ぎで組んでおきます。
スツールの脚の組み立て
相欠き継ぎした貫に、脚の部品を取り付けていきます。ここから先は立体的な組み立てになるのですこし作業がしにくくなります。
私の作業台は中央に穴があるため作業しやすいのですが、作業台が無い場合は机の端などをうまく使ってください。
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脚の取り付け
脚の端は斜めに切り落としているため、裏表の向きがあります。また、貫は小さい方が上、大きい方が下になります。
貫と脚の向きを間違えないよう注意しつつ、貫板と脚を現物合わせで位置調整していきます。
位置が決まったらビスで固定します。
片面から脚を取り付けたら反対側からも取り付けます。脚の部品の裏表の向きと、裏表のビスがぶつからないように注意してください。
杉板を曲げて貫を挟み込む
計八枚の脚を貫に取り付けたら、二枚一組になっている脚の先端を曲げて貫を挟み込みます。
脚の先端をクランプで挟んでぴったり合わさるようにしたら、そのままの状態で両面からビスを打ちます。
脚の長さを微調整
脚を組み立てたら床に置いてガタつきを確認します。
ガタガタするようであれば、どこかの脚が他よりも長いということです。長い脚を見つけて先端をノコヤスリで削って微調整します。
これを繰り返してガタつきがなくなったらスツールの脚の完成です!
スツールの座板の取り付け
スツールの座板は3枚ありますが横の連結は不要です。貫に乗せてビスで固定するようにします。
まず三枚をぴったり揃えて対角線の補助線を引きます。その補助線を頼りにして、貫にビスが刺さるようにビス位置を墨付けします。
墨付けしたら、貫通しない程度にビスを金づちで打ち込んでおきます。ビスを仮打ちすることで後の作業が楽になります。
ビスを仮打ちした座板をスツールの貫の上において、ビスを(電動ドリルで)本打ちします。
これで組み立て完了です!
がたつきが無いこと、ささくれや角が無いことを確認しておきましょう。
スツールの塗装
塗装はなんでもOKです。ペンキ(水性塗料)やオイルステインなどなんでも合います。
今回はシンプルに荏油(えごま油)で仕上げました。
組み上げた後で塗装するのは少々手間がかかります。組み立てる前に塗装しておくのも手ですね。
スツールの完成
塗装が終われば、杉板で作るスツールの完成です!
杉板でつくっているためとても軽く、重さは1㎏ちょっと。
子供でも軽々持ち運ぶことができますので、子供机にもぴったりです。
ただし、実際に使ってみてわかったことがあります。
脚は頑丈なので大人が乗っても大丈夫なのですが、杉板の座面が割れやすいという欠点があります。座ったときにパキッといってしまうかも・・
もし座板が割れてしまったときは、お好みの板を乗せ直してアレンジしてみてください。
また、床によっては脚の先端が傷つけないかが気になります。心配な場合はカバーを付けるのがおすすめです。
ちなみにこちらの脚カバーは自作品です。こちらの記事で詳しく紹介しています。
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最後に
最初にも紹介しましたが、あらためて今回参考にした書籍の紹介です。
今回は『杉で作る家具』(グループ モノ・モノ編)で紹介されているスツールを参考にして作成しました。
この本ではスツール以外にも、椅子、テーブル、収納家具など24点の家具の作り方が詳しく紹介されています。
杉板にこだわっているため材料費が安上がりで軽いというのも特徴です。
なにより、紹介されている内容はいずれも戦後間もないころの雑誌に掲載された内容というのが驚きです。当時の人々の知恵と工夫がぎっしりと詰まっています。
飾らず素朴で、それでいて機能的で洗練された、杉の家具を作ってみたくなったときにぜひ読んでみてください。