さくや(@sakuyakonoha77)です。
2019年8月に実施されたDIYアドバイザー一次試験(筆記)に受験に合格しました。
受験を思い立って申し込んだのが6月、その後筆記試験を受けたのが8月なので勉強期間は2か月程度でしたが、結果的に約9割の得点を獲得することができました。
この記事ではその受験勉強のときの経験をいかしてDIYアドバイザー一次試験(筆記)の傾向と対策についてまとめます。
前半で出題傾向と勉強方法の概要を説明し、後半では各分野ごとの具体的なポイントをまとめています。これから試験を受けるつもりの方、もしくは試験勉強中の方向けの記事です。
前回の記事ではDIYアドバイザーの役割、受験方法についてまとめていますので、まだ読んでいない方はそちらもご覧になってみてください。
DIYアドバイザー資格とは ~役割と受験方法、試験範囲について
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こんな方におすすめ
- DIYアドバイザー資格試験の過去の出題傾向と、試験の対策について知りたい方
- DIYアドバイザー資格試験を受験しようと思っている、もしくは現在受験勉強中の方
- 暗記が大っ嫌い!暗記に頼らずロジカルに勉強をしたい方
DIYアドバイザー一次試験(筆記)の出題範囲と出題比率
DIYアドバイザー一次試験(筆記)の出題範囲は前回の記事でも紹介しましたが、あらためて出題範囲を分類してみます。
試験問題の出題範囲について
試験問題では、その問題がどの分野から出題されているかが明記されています。たとえば以下のような形です。
例題
次の文章について、正しいものには〇を、誤っているものには×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
問x 道具、工具について
ア ツッキリソーは、換気口などの穴あけ作業に用いる。
イ 一枚刃カンナは、面取り作業に使われる。
ウ 追入れノミは、深い穴掘り作業に適している。
エ てん刻刀は、木材に文字を彫り込むための彫刻刀である。
正答 ア:〇 イ:〇 ウ:× エ:×
『問x 道具、工具について』と最初に明示されているため、どの分野からの出題かがわかるようになっています。この表示を利用して過去問を分類すると以下の12項目に分けることができます。
- 大工・作業・測定・切削・溶接工具
- 電動工具
- 建築金物
- 塗料
- 接着剤、充填剤、粘着剤、住まいの手入れ用品
- 木材、建材
- 床材、内装材
- 左官
- 水回り、ガス、電気
- 住宅の種類と構造、日常安全性、住宅の維持管理
- DIYに関する関連法規
- その他
過去問における各分野の出題比率
上で分類した12項目は均一に出題されるわけではなく、かたよりがあります。
2014年~2019年の試験問題について、各項目ごとの出題数と出題率を集計した結果が下記の表です。例年多少の差はあるものの、ここ6年間で出題傾向はほぼ変わっていません。
No. | 項目 | 出題数 (過去6年平均) | 出題率 (過去6年平均) |
1. | 大工・作業・測定・切削・溶接工具 | 9.8 | 21.0% |
2. | 電動工具 | 3.2 | 6.7% |
3. | 建築金物 | 5.5 | 11.7% |
4. | 塗料 | 2.8 | 5.9% |
5. | 接着剤、充填剤、粘着剤、住まいの手入れ用品 | 6.1 | 13.1% |
6. | 木材、建材 | 5.1 | 10.8% |
7. | 床材、内装材 | 2.4 | 5.1% |
8. | 左官 | 1.8 | 3.7% |
9. | 水回り、ガス、電気 | 3.6 | 7.6% |
10. | 住宅の種類と構造、日常安全性、住宅の維持管理 | 4.7 | 9.9% |
11. | DIYに関する関連法規 | 1.2 | 2.4% |
12. | その他 | 1.0 | 2.1% |
計 | 47 | 100.0% |
出題率トップ3は
ポイント
- 大工・作業・測定・切削・溶接工具(21.0%)
- 接着剤、充填剤、粘着剤、住まいの手入れ用品(13.1%)
- 建築金物(11.7%)
で、この三つを合わせると45.8%、全試験問題の約半分を占めています。ここで点数を獲得できないと不合格が確定してしまいますので、試験勉強でもかなりの時間を割く必要があります。
一方、出題数が少ない分野については得点できなかったとしても直ちに不合格となるわけではありません。得点できるに越したことはありませんが、試験合格を最優先にするならある程度割り切ってしまうのも手です。
小問数と試験時間、満点と合格基準点
先ほどの表を見ればわかるとおり問題数は47ですが、それぞれの問題は小問4つで構成されているため(問1、問2のみ例外)、小問数は185前後となります。
試験時間は90分。1問あたり1~2分で回答すればよいのですが、過去問を解いて慣れていれば1問あたり1分もかかりません。時間が余れば見直しをすることになるでしょう。
点数は200点満点です。各小問の配点は公開されていませんので不明ですが、おおむね1~2点でしょう。
試験の合否は合格基準点を超えたかどうかで判定されます。合格基準点は年によって異なりますが、過去6年間の合格基準点の平均値は133.3点です。合格ラインは約7割として、185問中130問正解すれば合格と考えておけば大丈夫です。
一次試験(学科)試験の勉強方法とひっかけ対策
基本的な勉強法
ハンドブックなどの教材を読み込み、過去問を解いてみるというのが基本的な勉強法になります。過去問を解く前に教材をすべて読む必要はありません。過去問にも出題分野が明記されていますので、ハンドブックをある程度読んだら対応する過去問を解いてみるという進め方もいいでしょう。
最初は全く解けないかもしれませんが、出題傾向がわかったらあらためてハンドブックを読むようにします。ハンドブックを読む、過去問にチャレンジする、間違えた部分について再度ハンドブックを読む・・を繰り返すのが、最も確実で近道となる対策法です。
勉強のコツ
過去問とまったく同じ問題が再度出題されることもありますが多くはなく、むしろ同じではないけれども似ている問題が出ることが多いです。そのため過去問で出題された項目に関連する部分をまとめて勉強することがコツです。
たとえば、以下のような問題が出たとします。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
モーターレンチはメッキ品など傷つきやすいナットの締め付けに適している
正答 〇
この問題はモーターレンチの特徴に関する問題ですが、教材で復習する際はモーターレンチの近くに並んで記載されている『モンキレンチ』『スピードレンチ』『トルクレンチ』『パイプレンチ』などをあわせて学習することがコツです。
この手の問題は似たような工具が多く間違えやすいのでよく狙われます。対策するために、たとえばモーターレンチとパイプレンチ、似ているけどどう違うの?というものについては、違いに着目して理解するようにします。
- モンキレンチは、アゴのサイズが調節できる
- スピードレンチは、調整不要で素早くつかむことができる
- トルクレンチは、一定の力で締め付けることができる
- パイプレンチは(モーターレンチに似ているが)くわえ部分に歯がついているので丸いパイプをくわえることができる
馴染みのない名前ばかりで覚えられないとき
試験問題には非常に多くの名前が出てきます。使ったことの無い道具はイラスト付きで見せられても頭に入ってこないことが多いものです。そういうときはYoutube動画を活用するのがベストです。
たとえば、以下のような問題が出たとします。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
ウォーターポンププライヤは、口の開きを調整できない
正答 ×
ウォーターポンププライヤを知らなければ苦しい問題です。ハンドブックでは
『ウォーターポンププライヤは、つかみ部が本体に対して鎌のような格好に首を曲げ、細かい歯が付いているプライヤである。』
と説明されていますが、それを聞いてもピンとこないでしょう。そういうときはYoutubeで見てしまうのが一番の近道です!
このように、馴染みのない言葉や道具が出たら、すぐにYoutubeやGoogle画像検索で見てしまうのが早いです。パソコンやスマホを脇において検索しながら勉強を進めましょう。
(定番の)ひっかけ問題対策
試験では『ひっかけ問題』が出ることがあります。ひっかけと言っても多くは定番のひっかけなので、過去問を解いていれば難しくありません。
例題で見てみましょう。まずは普通の問題を見てみてください。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
レンガやブロック積みのつなぎ目(目地)を埋めるときに目地ゴテを使った
正答 〇
これはなんとなくわかりますね。目地を埋めるのに目地ゴテをつかうのは、左官を知らなくても納得できそうです。
では、こちらはどうでしょうか。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
内装タイルのつなぎ目(目地)を埋めるときに目地ゴテを使った
正答 ×
こちらは×で、正しい道具はゴムコテとなります。
目地ゴテはレンガやブロック積みの時に使うものですが、内装材(タイル貼り、モザイク貼りなど)では使いません。レンガやブロックのすきまと、タイルの隙間とでは形、幅、深さが違うからです。
一見むずかしく見えますが、実はこの問題は過去に何度も出題されています。ひっかけと言いつつおきまりの問題なので、過去問を解いていれば対応できるようになります。深く考えないで過去問を解きましょう。
(本当の)ひっかけ問題対策
定番のひっかけはともかく、中には本当にひっかけにくる問題もあります。2019年の試験問題でもいくつかヒヤリとする問題がありました。
たとえばこちらの問題。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
ホットメルトシートタイプは、専用のガンで接着する。
『ホットメルト』と聞いて次のような商品を思い浮かべた方は、引っかかりやすかったのではないでしょうか。
ホットメルトロウタイプならば、専用のガンで接着するのが正解です。しかし問題はシートタイプなのでこちらですね。
見ればピンとくるかと思いますが、これはアイロンで接着するタイプです。したがって先ほどの問題は×が正解。
こういうひっかけ問題は、毎年必ず出るだろうと考えて意識して見つけに行くのがポイントになります。問題文を注意深く読む癖をつけることが目的なので、見つけられなくても大丈夫です。警戒心をもって問題文を読むようにしましょう。
個別分野の傾向と、試験対策のポイント
ここからは試験の傾向と対策を詳しく知りたい方のための記事です。できるかぎり具体的に記載しているため長くなります。ご了承ください。
1.大工・作業・測定・切削・溶接工具
主な内容
- 大工道具(鉋、ノコギリ、ノミ、金づちなど)
- 作業工具(ドライバー、レンチ、スパナ、プライヤ、ペンチ、ニッパ、バイス、クランプなど)
- 測定工具(さしがね、ノギス、スコヤ、レベルゲージ、レーザー墨出し器、水平器、ピッチゲージ、マイクロメーターなど)
- 切削工具(ヤスリ、タップ、ダイス、サンドペーパーなど)
- 溶接工具(ハンダゴテ、ハンダ、フラックスなど)
試験の傾向と対策
道具は今も昔もあまり変わらないため、過去問と同様の問題が出題されやすい分野です。種類が多いため暗記しようとすると苦労しますが、知らない道具はYoutubeで動画を見るようにしましょう。イメージがあれば簡単に覚えることができます。
注意点としては(2019年の試験問題では出題されませんでしたが)タップ・ダイス・逆タップが頻出です。逆タップに馴染みのない方はこちらの動画を見てみるとよくわかると思います。
※エキストラクターとは、折れたりナメたりさび付いたりしたネジを引き抜くための工具です。先端がらせん状になっているエキストラクターを、特に『逆タップ』と呼びます。
道具の名前を一通り覚えたら、ホームセンターに行って実物を見てみましょう。普段は全く意識しなかった道具も目に入ってくるようになるはずです。道具一つ一つを理解して好きになることが、試験問題を解くための近道です。
2.電動工具
主な内容
- 電動工具(ドリル、ジグソー、サンダ、丸ノコ、ルーター、トリマー、ディスクグラインダーなど)
試験の傾向と対策
電動工具は使用上の注意が多いものですが、試験では用途の方がよく出題されます。
試験で要注意なのはサンダとディスクグラインダーです。
サンダには3種類あります(オービタルサンダ、ランダムサンダ、ベルトサンダ)。それぞれについて、ペーパー(またはベルト、以下同様)は汎用か専用か、ペーパーはどのような動きをするかの特徴を覚える必要があります。
ディスクグラインダーについては、その用途と動かし方がよく出題されます。ディスクグラインダーは研磨に使ったりレンガの切断に使ったりと用途の広い道具のため、試験では様々な場面で登場します。どのようなことができるのかを一通り知っておくとよいでしょう。動かし方については、一度Youtube動画を見ておいてください。
その他の電動工具についてはあまり難しい問題は出ませんので、過去問をひととおり解いておけば大丈夫です。
3.建築金物
主な内容
- 丁番(丁番の種類、特徴、用途など)
- 錠前(ドアの鍵の種類、特徴、用途、防犯性能など)
- ドア用金物(ガードプレートなどの防犯金物、補助錠、ローラーキャッチなどの止め金具など)
- ドアクローザー(種類と特長、速度調整の方法など)
- その他金物(ヒートン、キャスター、戸車、テーブル脚など)
- ネット、針金、チェーン(種類、特徴、用途など)
- 接合金物(クギ、ネジ、ボルト、ナット、座金、アンカー、補強金物、接合金物など)
試験の傾向と対策
丁番は種類が多いように見えますが、試験に出てくる問題は限られます。過去問を解いておけば問題ありません。
錠前は特徴をつかむまでが一苦労です。『チューブラー鍵』と『円筒鍵』と『インテグラル錠』は何が違うのかを、最初はなかなか理解できないかもしれません。
名前に惑わされず、サムターン、デッドボルト、ラッチボルトの有無と位置によって違いを区別することに集中してください。区別できるようになれば問題にも対処できるようになります。
ドア用金物は名前が紛らわしいのでひっかけ問題で出題されがちです。名前とイメージをしっかり一致させる必要があります。『ドアガード』『ガードプレート』『ドアプレート』は全く違うものなので注意しましょう。
ドアクローザーは、調整弁の種類と調整方法さえ覚えれば大丈夫です。問題のひねりようがないので意外と簡単です。
ネット・針金・チェーンは、種類と用途を覚えます。しかし見たことの無いものを覚えるのは辛いので、ホームセンターで実物を見ましょう。種類は案外少ないので、それほど苦労はしません。
クギとネジは、すべて覚えようとすると苦労します。
しかし試験問題ではあまり微妙な問題は出ないようなので、ビスはおおざっぱに『接合力』『色』『用途』を覚えておけば問題には対処できるようになります。
アンカーはDIYアドバイザー試験の難所の一つですが、まずホームセンターで実物を見てください。
奇妙な形のアンカーがたくさんあることに気づくはずです。実物を見てから勉強を始めることで、頭に入りやすくなります。ホームセンターによってはPOPやムービーで特徴や使い方を紹介していますので、それを見ることができれば近道になります。
木造建築用接合金物は種類が多いのですが・・出題量は少ないので、余裕があれば覚えればいいかな・・という感じです。
4.塗料
主な内容
- 塗料(水性塗料、油性塗料、スプレー、ニス、特殊塗料など)
- 塗装用具(ハケ、コテバケ、ローラーなど)
- 下地調整(木部、鉄部、壁などの下地処理の方法)
- 塗り方(塗装用具の使い方、塗装後の後始末など)
試験の傾向と対策
出題量は多くはないのですが、毎年必ず出題されます。ポイントを押さえれば難しくはないので、暗記に頼らず理解することをお勧めします。
塗料はどのような場所で使うものなのかを意識することが大切です。
勉強を始めたばかりの頃は『水性』と『油性』で区別して理解しがちですが、試験でそこを問われることは多くありません。むしろ『耐候性』『耐摩耗性』『耐アルカリ性(=コンクリート適性)』といった特徴の方で理解したほうが、用途を問われる試験問題で回答しやすくなります。
ニスは種類が少ないので、それぞれの特徴をしっかり理解します。『水性ニス』『水性つや出しニス』『水性ウレタンニス』の違いは試験問題で頻出ですが、違いが明確なのでひとつひとつ覚えましょう。水性ウレタンニスだけは用途が広いため、若干トリッキーな問題が出されることがありますので気を付けましょう。(適切なニスが選択肢にないとき、消去法で水性ウレタンニスが正解になるなど)
ステインについても注意が必要です。『外部用ステイン』『水性ステイン』『オイルステイン』は名前は似ていますが性質が全く違うので、特徴を理解して区別する必要があります。これもどこで使うものなのかを意識するようにしましょう。
5.接着剤、充填剤、粘着剤、住まいの手入れ用品
主な内容
- 接着剤
- 接着の方法と用具
- 充填剤
- 粘着剤
- 住宅用洗剤、漂白剤
試験の傾向と対策
細かい内容を書くのを省きたくなるほど、種類が多い分野です。
ここは難易度が高いうえに出題量も多めです。実技試験にも関係するためDIYアドバイザー試験の最大の難所と言えるでしょう。
暗記に頼ると非常に苦労するので、接着剤、充填剤の性質を理解することに力を注ぐことをお勧めします。
ここからは少し踏み込んだ説明をします。実際に勉強で苦労している方向けのため、理屈っぽいのが苦手な方は次の項目まで読み飛ばしてください。
例えばセメダインを例に説明します。
セメダインはセルロース溶剤系接着剤で、有機溶剤に植物繊維であるセルロースを溶かし込んだものです。
有機溶剤とはシンナーやベンジンなどの鼻にツンとくる液体のことで、速く乾燥する性質があります。
植物繊維は紙と同じものです。つまりセメダインは「紙を有機溶剤で溶かしたもの」と考えることができます。
セメダインで貼り合わせると有機溶剤が揮発し、揮発後に残った植物繊維が貼り合わされた両側に絡みついて固定される、というのが接着の仕組みです。
この仕組みからわかることは、セルロース溶剤系接着剤の特徴はオープンタイム※が不要であることと、紙、木、竹など植物系のものと相性がいいということです。子供の頃にセメダインを使って紙工作をした方も多いのではないでしょうか。
※オープンタイム・・・接着剤を塗布した後、待ち時間を設けること。乾かしてから張り合わせるイメージ
セルロース溶剤系接着剤の仕組みがわかったら、それをすこしずつアレンジしてバリエーションを増やしていきます。
セルロース溶剤系の「セルロース」を「酢酸ビニル」に置き換えてみます。有機溶剤に溶かすものを、紙から酢酸ビニルという樹脂に変えるわけです。そうしてできあがるのが酢酸ビニル溶剤系接着剤となります。
溶かしているものが紙から樹脂に変わったので、今度は植物系以外にも付きやすくなり、コンクリート、金属、陶器など、様々なものに接着するようになります。特に壁下地との接着や、タイル貼りの時によく使用されます。
さて、次は酢酸ビニル溶剤系の「溶剤」を「水」に置き換えてみましょう。すると酢酸ビニル樹脂系エマルション、いわゆる木工ボンドになります。
ちなみにエマルションとは水で溶かした乳液のようなものと考えてください。
樹脂の水溶液なので、汎用性は高いものの、水が浸透しないものには接着しにくいという性質があります。木材、布、紙、皮革などはよく接着しますが、金属やプラスチックはくっつように見えてあとから剥がれたりしますので不向きです。また、もともとが水溶液なので水湿に弱いのも弱点ですね。
そういった酢酸ビニル樹脂系エマルションの弱点を補ったのが共重合エマルションで、DIYアドバイザー試験においては「手芸用」と「壁紙用」として出題されます。
さてここまで来たら、残りの接着剤は個別に特徴を理解していきます。
まずはプラスチック溶かしてくっつける系。プラモデルなどのスチロール樹脂を溶かすのがスチロール樹脂系接着剤です。
塩ビパイプなどの硬質塩ビ樹脂を溶かすのは硬質塩ビ用接着剤。
スチロール樹脂系も硬質塩ビ系も、どちらも両側のプラスチックを溶かして接着するものなので、塗布したらすぐに張り合わせます(もしくは隙間に流し込む)。したがって当然オープンタイム不要です。
つぎはやわらかいベタベタ膜をつくって互いにくっつく系、軟質塩ビ用接着剤です。
やわらかいベタベタ膜なので、やわらかいビニールを接着することができます。今回登場する接着剤の中では唯一オープンタイムが必要で両面に塗布する必要がある接着剤です。DIYアドバイザー試験に出てくる接着剤でこの特性を持つものは軟質塩ビ系のみ。覚えましょう。
そして指がくっついたら離れないシアノアクリレート系、いわゆるアロンアルファです。
ほんのちょっとでくっつくくらい強力なので微量塗布でよいのですが、衝撃には弱いという性質もあります。
ちなみに、最近では衝撃に強いアロンアルファもあったりします。
そして最後に残るのはエポキシ樹脂系。
これはご存じ二つの液体をまぜまぜして塗布するだけで大抵なんでもくっつけちゃう優れものです。
このように、接着剤は仕組みを理解すれば覚えやすくなります。他にも多くの接着剤があるのですが丸暗記は非常につらいので、理屈っぽい考え方に抵抗がない方は試してみてください。
さて、充填剤の方も試験問題で頻出のため理解する必要がありますが、こちらは幾分シンプルです。使う場所で区別すれば対応できます。
- ガラス、浴室、洗面所、台所など、水周りの目地で使うのがシリコーン系シーリング材
- 外壁、ALC、屋根、石材など、外周りの目地で使うのが変成シリコーン系シーリング材
- 室内の木部や壁紙で使うのがアクリル系シーリング材
- ブチルゴム系は金属周り(のみ)で使用
- 発泡ウレタン系は泡立って2倍に膨らむので大きな隙間、配管周りなどを埋めるのに使用
粘着剤、洗剤、漂白剤はあまり苦労しないので、過去問を解いておけば十分です。
6.木材、建材
主な内容
- 木材(樹木の種類と特徴、心材と辺材、木表と木裏、板目と柾目の違いなど)
- 集成材、合板(種類と特徴)
- 木質系ボード(パーティクルボード、インシュレーションボード、MDF、ハードボードなど)
- せっこう系ボード(せっこうボード、シージングボード、せっこうラスボードなど)
- セメント系ボード(スレートボード・波板、フレキシブル板、けいかる板、ALCなど)
- プラスチック材(メラミン積層板、FRP、アクリル樹脂、PE、PP、PVC、PSなど)
試験の傾向と対策
木材は、まず代表的な針葉樹を覚えてしまいましょう。馴染みのあるスギ、ヒノキ、マツに加えて、ホームセンターでよく見るツガ(米栂)、SPF、あとはヒバを覚えておけば大丈夫です。
針葉樹を覚えたら、そのほかはすべて広葉樹です。ホームセンターでよく見るラワン、バルサ、ファルカタも広葉樹です。
次に木材の取り方と材の特徴を覚えてしまいます。心材と辺材(赤身と白太)は頻出です。板目と柾目は見分け方と性質の違い、木表と木裏はどっちがどっちかの区別ができれば大丈夫です。
集成材と合板はあまり突っ込んだ問題は出ない気がしていますが、2019年の試験問題ではLVL(単板積層材;とっても素敵な合板)が出題されて時代の流れを感じました。
せっこうボードは内装でおなじみですね。穴をあけるかあけないか・・で悩みがちなアレです。アンカーとの組み合わせ問題が頻出で、難易度も高いので辛いところです。パターンは限られるので、過去問を解きつつ、一つ一つ覚えていきましょう。
セメント系ボード、木質系ボード、せっこう系ボードは、単体の設問ではなく他の分野との絡みで出題されることもあるので要注意です。たとえば、モルタルの下地にするのはどのボードかとか、屋根の下地に使うのは何かとか。見たことが無くてイメージしにくいものはGoogle画像検索で確認しておきましょう。
プラスチックのPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)は、教科書の表とにらめっこするよりも、ホームセンターで実物を見た方が早いですね。壁紙は塩化ビニル、麦茶の容器はポリプロピレン、醤油の容器はポリスチレン・・というように、身の回りのものと紐づけてしまえば、特徴も簡単に覚えられるようになります。
7.床材、内装材
主な内容
- 床材(畳、木質系床、プラスチック系床、ビニル長尺床材、コルクタイル、カーペットなど)
- 内装材(障子、ふすま、壁紙など)
試験の傾向と対策
この分野は範囲が広くて覚えるのは大変なのですが、ひねった問題はあまりでません。ハンドブックを読んで、過去問をやっておけば十分です。以上。
8.左官
主な内容
- 塗り壁材(繊維壁、京壁、じゅらく壁、土壁、下地調整と塗り方など)
- セメント(種類と用途など)
試験の傾向と対策
良く出題されるのはコテの用途の問題です。
先ほども紹介しましたが、目地ゴテとゴムコテのひっかけ問題は定番すぎて、もはやひっかけではないですね。
その他のコテでは、ブロックごてとレンガゴテの用途の違い、木ゴテとプラスチック角ゴテをどこで使うのかなど、過去問を参考にポイントで覚えておけば大丈夫です。
これらも機会があるときにホームセンターで一度実物を見てみてください。レンガゴテはイラストで見るよりも大きいですよ。
あとはモルタルとコンクリートのセメント・砂・砂利の配合比と、配合手順がよく出題されます。コンクリートの容積は砂利の容積と同じという点が何度も過去問に出題されていますので覚えておきましょう。
9.水回り、ガス、電気
主な内容
- 水栓金具(単口水栓と混合水栓の種類と用途、ボールタップ、パッキンの種類と用途など)
- 電気(基礎知識、電池、ケーブル、プラグ、スイッチなど)
試験の傾向と対策
水栓金具は種類も部品数も多いため、ハンドブックの図をぼーっと見ていても頭に入ってきません。部品の位置と名前を丸暗記するのはしんどいです。
ここはあえて暗記を諦めて、なぜそうなっているのかを考えてみるのがおすすめです。そうしておけば実技試験でも役立ちます。
そもそも水栓は必要最低限の部品だけで作られています。余分な部品などありません。パッキンも金具も必要があるからこそ特徴的な形になり、決まった場所に設置されているのですから、その理由を理解すれば楽勝です。
そこで、まずは実際の水道の構造をyoutubeで見てみましょう。
水が流れる仕組み、水が止まる仕組み、そして3種のパッキンについてわかりやすく説明されています。
3種のパッキンがどのような水流を止めるのかが感覚的にわかってきたら、水漏れ対策のケーススタディで学習を進めてみてください。
- 吐水口からの水漏れ → 蛇口の中央で水を止められていない → コマパッキン(ケレップ)の劣化
- ハンドルの下からの水漏れ → 蛇口中央を通る水が、上の隙間から漏れ出している → 上部パッキン(三角パッキン)の劣化
- 蛇口パイプ根元からの水漏れ → 蛇口を通る水が、途中の継ぎ目から漏れている → U字パッキン(パイプパッキン)の劣化
- 水栓金具根元からの水漏れ → シールテープの劣化
このようにケースバイケースで水漏れの原因を理解し、重要な働きをするパッキンを覚えていきましょう。
この方法は水栓の種類が変わったとしても応用可能です。トイレのボールタップ、洗面台下の排水管部分についても、構造と、各パッキンがどのような働きをしているのかをまず理解すれば、楽に頭に入ってくるはずです。
なお、水栓周りでは同じ部品でも複数の名前があることが多いです。特にパッキンの名前はバリエーションがあるので、あまり固く考えず柔軟に対応できるようにしておく必要があります。
さて次は、電気の分野ですね。。
電気の分野のうち、電池はDIYアドバイザーの難所の一つです。聞いたこともない電池がたくさん出てくるため、なじみがない方にとっては非常につらい分野でしょう。
ここをなんとかしたい方のために、少し難しくなりますが考え方を説明してみます。
このレベルの話はDIYアドバイザーハンドブックにも記載されていませんので、無理して理解する必要はありません。数年に一度出題される分野ではありますが、ここで時間を使うよりは塗料や接着剤の方に時間を割いたほうが有意義に思えます。興味のある方のみ読んでみてください。
まず、次の例題を見てみてください。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
ア 14Vの電動工具にニッケル・カドミウム電池を使用した
イ 12Vの電動工具にリチウムイオン電池を使用した
正答 ア:× イ:×
どちらも×なのですが、なぜ×なのかが問題です。ニッケル・カドミウム電池とリチウムイオン電池はどちらも電動工具に使用される電池なので、使用することについては問題ありません。問題は電圧(V)の方です。
これを理解するためには『公称電圧』という言葉を知っておく必要があります。
公称電圧(こうしょうでんあつ)とは、電池を通常の状態で使用した場合に得られる端子間の電圧の目安として定められている値である。
つまり、電池には種類ごとに電圧の目安が定められているのです。乾電池の電圧は1.5Vと覚えている方もいるかもしれませんが、それが公称電圧です。
ニッケル・カドミウム電池の公称電圧は1.2Vですが、これでは問題文の電圧(14V)には不足です。実は電動工具の電池は内部で複数個の電池を同時に使っているため、見かけ上の電圧が高くなっているのです。そう考えると、電動工具の電池の電圧は使用している電池の公称電圧の倍数になるはずだということがわかります。
問題文のアでは14Vとなっていますが、これはニッケル・カドミウム電池の公称電圧である1.2Vの倍数ではないため×となります。
同様に、リチウムイオン電池についても考えてみます。リチウムイオン電池の公称電圧は3.6Vです。問題文のイでは12Vとなっていますが、3.6Vの倍数ではないため×だということがわかります。もし10.8Vであればリチウムイオン電池x3でぴったりなのでOKということですね。
では、つづいて次の問題を見てみてください。
例題
次の文章について、正しければ〇を、誤っていれば×を答案用紙の回答欄にマークしなさい。
ウ 6Vの電子式暗証番号錠にアルカリボタン電池を使用した
正答 ウ:×
電子式暗証番号錠とはこういうものですね。
なお、アルカリボタン電池の公称電圧は1.5Vです。
6Vは1.5Vの倍数なのでアルカリボタン電池を4つ使えば問題なさそうに見えますが、正解は×。何が問題なのでしょうか。
これを理解するには新たに『公称容量』という言葉を知る必要があります。
公称容量とは電池が蓄えることができるエネルギー量と考えてください。多ければ多いほど大きな仕事ができますが、少なければ小さな仕事しかできません。なお、ここで言う『仕事』とはワット(W)のことです。
アルカリボタン電池の公称容量は120mAhですが、これは単三アルカリ乾電池の1/5~1/6程度です。つまり同じアルカリ電池でも、ボタン電池は単三電池と比べてできる仕事は非常に小さいということになります。ボタン電池は小さいので、言われてみれば納得できますよね。
問題文にある『電子式暗証番号錠』はドアについている鍵のことです。鍵は金属製の重たいもので、それを動作させるためにはかなりの電力が必要になると想像できます。したがって仕事量が小さすぎるアルカリボタン電池では×なのです。ちなみにこの場合に最適な電池は『パック型リチウム電池』で、パック型リチウム電池の公称電圧は6V、公称容量は1400mAhにもなります。
このように、電池の問題をしっかり解こうとすると非常に苦労しますが無理というわけではありません。なにがなんでも解いてやる!という気概のある方は、さらに踏み込んで酸化銀電池、空気亜鉛電池、ニッケル水素電池についても調べてみてください。(上の話が理解できるなら、それほど難しくはないです)
10.住宅の種類と構造、日常安全性、住宅の維持管理
主な内容
- 住宅の種類(構造材料による分類、構法による分類など)
- 木造在来構法
- 2x4構法
- 非木造在来工法住宅(プレハブ住宅、鉄筋コンクリート造など)
試験の傾向と対策
ここで理解すべきは『木造在来構法の仕組み』です。そのほかのことはともかく、木造在来構法は他分野の試験項目にも絡めて出題されるため、基礎知識として持っておく必要があります。登場する名前が多いため暗記に頼ろうとすると非常に苦労します。暗記するのではなく、何が何を支えているのかという関係に着目して理解するようにしてください。
まず、床組みに関して要点をまとめると以下のようになります。
- コンクリートの基礎が、土台を支えている
- 束石(つかいし)が床束(ゆかづか)を支えている
- 床束と土台が大引き(おおびき)を支えている
- 土台の歪みを防ぐために火打ち土台を入れる
- 床束の歪みを防ぐために根がらみを入れる
- 大引きと根太掛け(ねだかけ)が根太(ねだ)を支えている
- 根太が床板を支えている
- 床板が、床材(畳、フローリングなど)を支えている
そして床材の上で私たちは生活している、というわけです。足元のイメージができたでしょうか?
次に、軸組についてまとめます。
- 土台が通し柱を支えている
- 通し柱が軒桁を支えている
- 通し柱と管柱で、胴差を支えている
- 二階の床を胴差が支えている
- 間柱が壁材を支えている ※胴差を支えているわけではない
- 水平方向の歪みを防ぐために火打ち梁を入れる
- 垂直方向の歪みを防ぐために筋違い(すじかい)を入れる ※上の図では省略
軸組に関しては、上からの荷重を支える構造材と、そうではなく壁を支えるための構造材がありますので区別する必要があります。間柱は壁の下地材でDIYにも関わってくることがありますね。
床と壁を見ましたので、次は小屋組み(屋根)を見てみましょう。小屋組みは、実は床組みとほぼ同じ仕組みになっています。その対応関係にも注目してください。
- 小屋梁(こやばり)が小屋束(こやづか)を支えている
- 小屋束が母屋(もや)を支えている
※床組みの大引に相当 - 母屋が垂木(たるき)を支えている
※床組みの根太に相当 - 垂木が野地板(のじいた)を支えている
※床組みの床板に相当 - 野地板が屋根ふき材(瓦など)を支えている
※床組みの床材に相当 - 小屋束の歪みを防ぐために、小屋筋交いを入れる
※床組みの根がらみに相当
このように床組みと対応させると理解しやすくなります。そして同様の考え方で壁や天井も理解することが可能です。
床組みを順に『大引き → 根太 → 床板 → 床材』と書き表すとすると、小屋組み、壁組み、天井下地は次のように表すことができます。
- 小屋組み: 母屋 → 垂木 → 野地板 → 屋根ふき材
- 壁組み(真壁): 間柱 → 貫 → ラスボード → 外装・内装材
- 天井下地:吊り木受け → 吊り木 → 野縁受け → 野縁 → 下地材・仕上げ材
木造在来工法には多くの部材や名前がでてきますが、上記のように仕組みとあわせて理解しておけば覚えやすくなるだけでなく、試験の際に応用できるようになります。何度か繰り返し読めば自然と頭に入ってきますので、頑張って復習してみてください。
11.DIYに関する関連法規
主な内容
- 建築基準法などの各種関連法規
- 電気用品安全法などの各種安全法
試験の傾向と対策
主な内容の記載を相当省略してしまいましたが、この項目は例年の出題数が最も少ない分野のため、あまり力を入れる必要がありません。最悪、あきらめたとしても合否には影響しないです。
ただし英語が少しわかれば直感で回答できる問題も多いので、各種マークについて以下のポイントだけ押さえておきましょう。
- JAS ・・・ Japanese Agricultural Standard:木材関連
- JIS ・・・ Japanese Industrial Standard:工業製品関連
- PS~ ・・・ Product Safty of ~の略で、後に続くものをまとめて覚える
PSLPG(Liquid Petroleum Gas):液化石油ガス関連
PSTG(Town Gas):都市ガス関連
PSC(Customer):消費者関連
PSE(Electrical):電気用品関連 - ST ・・・ Safety Toy:おもちゃ関連
- TS ・・・ Traffic Safety:交通安全
- BL ・・・ Better Living:優良住宅関連
- BAA ・・・ Bicycle Association Approved:自転車関連
- CP ・・・ Crime Prevention:防犯関連
なお、この分野はひっかけ問題も多いです。STとTSのひっかけ程度なら対応できるかもしれませんが、乗車用ヘルメットについているマークがTSではなくPSCであるというのは回答は難しいでしょう。そこは割り切ってしまっていいと思います。
12.その他
主な内容
- お絵かき問題
- 記述問題(予測不能)
試験の傾向と対策
毎年、問1と問2は特別な問題が出ます。
問1は、立体図形の投影図を描く問題。
問2は、どこから出るかわからないけど記述問題。
どちらも過去問をみて「ふ~ん」と思っておけば大丈夫です。問1は難しくないし、問2はどこから出るかわかないため対策不能なので。
まとめ
いかがだったでしょうか。私が2か月の試験勉強で気を付けていたポイントについてまとめてみました。
DIYアドバイザー資格を取得しようかと考えている方と、DIYアドバイザー資格取得に向けて勉強している方のお役に立てれば幸いです。
もし下記の記事をまだ読んでいなければ、あわせて読んでみてください。
DIYアドバイザー資格とは ~役割と受験方法、試験範囲について
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それでは、またお会いしましょう!