さくや(@sakuyakonoha77)です。
以前の記事で、ノコギリによる留め切り(45度切り)の方法について説明しました。
ノコギリで正確に留め切りをする方法 ~角度調整式ノコギリガイドの作り方
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ノコギリでも相当な精度を出すことができますが、場合によってはどうしても鉋で微調整したいときもあります。
しかし鉋による微調整は、フリーハンドではかなり難しいものです。
そういうときも、やはり鉋用の治具を作っておくと頼りになります。
この記事では、鉋専用の角度調整式・留め切りガイドについて詳しく紹介していきます。
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鉋用《角度調整式》留め切りガイド
ノコギリで留め切りはできるものの、精度にはどうしても限界があります。0.1㎜オーダーまではノコギリで攻められたとしても、そこから先はやはり鉋の領分です。
伝統的な『留め削り台』もありますが、角度を調整できなければ精度が心もとない。
ではどうすればいいのか?
・・そんなことを考え続けた末に、たどり着いたのがこちら。
角度調整式の鉋用留め削り台、名付けて『さくや式留め削り台』です(笑
この留め削り台は、鉋(和鉋 or 西洋鉋)のどちらにも対応することができます。
鉋用留め削り台の設計図
鉋用留め削り台の設計図はこちらです。とはいっても、各部のサイズは自由です。手に入る材料の都合、実際に加工したい材料の大きさ、作業スペースなどに合わせて寸法を変えても問題ありません。
角度調整の仕組み
角度を決めるためのフェンスは、直角のL字金具に全ネジで固定されています。
その全ネジに固定しているナット二つを回すことで全ネジが前後に動き、フェンスの角度を調整できるというわけです。
それでは、鉋用留め削り台の作り方を見ていきます。
鉋用留め削り台の作り方
材料
・MDF板(15mm厚、5mm厚)
・角材(材料は何でもよい)
・全ネジボルト、六角ナット、オニメナット、ネジ、ワッシャー、L字型の金具など(ネジの太さはM6などで統一する)
材料は目安です。ベース板は誤差が無いものが良いのでMDFをお勧めしますが、そのほかは手に入りやすいもので構いません。
ネジの太さが異なるとなにかと苦労するので、M6などで統一します。重要なのはL字型の金具で、ホームセンターによって取り扱いが異なるので、手に入るものに合わせてネジやボルトを揃えてください。
ベース板の準備
まずはベース板を用意します。15mm厚の板と5mm厚の板の二つを貼り合わせ、下のような台を作ります。
手前にある段差は鉋を横向きで滑らせる部分になります。
段差の厚みは手持ちの鉋に合わせる必要があるので注意してください。この厚みは、鉋の側面から鉋刃の端までの距離よりも大きい必要があります。西洋鉋(ブロックプレーン)であれば5mmで十分ですが、和鉋の場合は10~15mm程度必要になります。
また、段差の部分はしっかり直線が出ている必要があります。100均で買ったMDF板の端を、そのまま利用するのが一番簡単です。
なお、上の図ではベース板に6か所の穴が開いていますが、この時点ではどこに穴を開ければいいのかがわからないので無視して構いません。
ベース板の準備ができたら、次はフェンスとなる角材の加工をします。
フェンス材の加工
フェンスとなる角材(2本)の両端は45度で切断しておきます。ここの角度は正確でなくても大丈夫です。留め定規で墨付けをし、ノコギリでおおざっぱに切り落としましょう。
その後、フェンスの中央付近にボルト挿し込み用のオニメナットを埋め込みます。埋め込み位置はL字金具の形によって変える必要があるので、手に入った材料で慎重に位置合わせをしてください。
フェンスの中心線上に下穴をあけ、オニメナットを埋め込みます。
オニメナットに差し込む全ネジは、長い全ネジを買ってきて加工します。金属加工は木工と比べると骨が折れますが、金属用のノコギリがあればそれほど難しくはありません。
全ネジが用意できたら、取り付け用のワッシャー、バネ座金、ナットを用意します。フェンス2本分になるので、ワッシャーx2、バネ座金x2、ナットx6が必要です。
なお、バネ座金は無くても大丈夫です。ばね座金があれば緩みにくくなるというだけなので、お好みで使ってください。
用意した金具をフェンスに取り付けていきます。フェンスに全ネジをねじ込み、ワッシャー、バネ座金、ナットの順で全ネジに通し、レンチで締めます。※M6用六角ナットなら、レンチは10mm
ベース板にL字金具取付用の貫通穴をあける
フェンスに金具を取り付けたら、ベース板にフェンス2本を置いてL字金具の位置を確認します。今回はこのような金具を使いました。
金具はホームセンターによって取り扱いが異なるため、手に入りやすいものを使って大丈夫です。金具によって穴をあける位置も変わりますのでうまく調整してください。
L字金具の位置が決まったら、ベース板に固定するためのボルトを通す位置に印をつけて、貫通穴を開けます。
今回はボルトをナットで固定する方式にしたため、裏面に座繰り穴を空けました。面倒な場合はベース板にオニメナットを埋め込んでもOKです。
フェンスとL字金具の取り付け
ベース板に穴を開けたら、フェンスとL字金具を取り付けていきます。
まずはベース板にL字金具を取り付けます。ベース板裏面の座繰り穴にナットを入れておき、表面からワッシャー、バネ座金、六角ボルトを取り付けて締め付けます。
次にフェンスを取り付けます。ベースの、二本のフェンスが合わさる部分(下写真の上部)の裏面から長めの六角ボルトを差し込み、表面まで貫通させます。
なお、台の裏面の座繰り穴には六角ボルトの頭が納まっています。六角ボルトの長さは台やガイドの厚みに合わせて調整してください。
フェンスの先端にも貫通穴をあけ、先程貫通させたボルトに差し込み、上からワッシャー、ナットを取り付けて軽く締めます。フェンスの合わる先端部分は、ベース板の段差の上に5mm程度はみ出すように取り付けてください。このはみ出た部分はあとで削り取ります。
フェンスを取り付けたら、ベース板の段差とフェンスが45度になるように設定し、各ナットを締め付けて固定します。ただしこの角度は後で調整可能なので、あまりこだわる必要はありません。
ベース板の裏面にフックを取り付ける
ベースの裏面両端には、この留め削り台を作業台ひっかけるためのフックを取り付けます。ある程度の厚さがあれば材料は何でもよいので、あまっている端材などを利用してください。
フックを両端に取り付けているのは、この留め削り台の向きを反転させても使えるようにするためです。和鉋・西洋鉋・右手・左手で使うことがあるので両方に付けておくと便利です。
フェンスの先端を鉋で削る
鉋を使って、フェンスの合わさった先端部分を削ります。最初は先端を少しずつ削っていきますが、最終的には台の段差に合わせて鉋を滑らせるようにし、鉋がひっかからなくなるまで削るようにします。
この留め削り台は和鉋と西洋鉋のどちらでも使用できますが、使い方が少し異なります。
和鉋の場合は引き削りになるので、鉋を奥から手前に引く形で使います。
西洋鉋の場合は押し削りなので、鉋を手前から奥に押す形で使うことになります。
いずれの場合でも、台の裏面にあるフックを作業台にひっかけることで留め削り台が動かないように固定できます。
最後に、フックの側面に細長く切った紙ヤスリを貼り付けておきます。材料を押し当てるときのすべり止めになり、作業がしやすくなります。
これで作成完了です。言葉で説明すると難しいのですが、書かれている通りの材料や作り方で進める必要は無いので、手に入りやすい材料や金具を使って自由にアレンジして作ってみてください。
鉋用留め削り台の使い方
木材をフェンスに押し当てて置き、鉋を台の段差に合わせて滑らせて、木材の木口をすこしずつ削るようにします。
最初はサクッ、サクッと削れますが、繰り返すうちに手ごたえが無くなります。手ごたえが無くなったら材料の仕上がりを確認し、さらに削る場合は先端がすこし突き出るように置き直して削ります。
このとき材料の木口面を霧吹きで湿らせておくときれいに削ることができます。いちどにたくさん削ろうとすると断面が荒れるため、仕上げの際にはできる限り薄く削るようにしてください。
反対向きの留め削りをする場合は、反対側のガイドを使います。
フェンスの角度を微調整したいときは、L字金具を挟み込んでいる二つのナットを回します。
正確な45度を作りたい場合
なお、二本のフェンスを両方使って額縁を作るとき、それぞれの角度が厳密に45度である必要はありません。片方が44度、もう片方が46度でも、合わせれば直角になり問題なく額縁を作ることができるためです。
一方で、一本のガイドのみで額縁を作れるように角度調整していくことで『正確な45度』を作ることもできます。片方のガイドのみで額縁を作ることができたのであれば、その角度は正確な45度になっているということができるからです。
留め削り台を使うと、精度の高い留め切りができる
この留め削り台を使うと、木材をこのように削ることができます。使っている材料はホームセンターで買ってきたパイン材です。
木口の木目がはっきり見えるくらい、きれいに切断されているのがわかるかと思います。この美しさはノコギリでは実現できません。
留め定規に合わせて角度を確認してみました。
わずかに見える定規の目盛りがすべて同じ大きさなので、目視で確認できるレベルでは完全な45度になっているのがわかります。
そして、この木材を組み合わせて作った直角がこちら。
切断面が隙間なく密着しているだけでなく、角がしっかりと直角になっています。この方法で額縁を作成したのがこちらです。
これで、正確な45度切りが実現できるようになりました!
45度以外の加工を鉋でする際には、『留め』ではない削り台が必要になります。
そのための削り台についてもこちらで詳しく紹介していますので、もし興味があればぜひ読んでみてください!
フェンス可動式の鉋用削り台(Shooting Board)の機能と作り方
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